SUMMARY
鍼灸・マッサージ院というと,医療関係者から「何が行われているのか?何者なのか?」とみられがちである。しかし,利用者からの信頼は厚く,継続利用されているという事実もある。資格制度と現状を報告する。
KEYWORD
病鍼連携
病院内での鍼灸部門が増加傾向にある。一方で,プライマリ・ケア医との連携ができれば地域の利用者からの信頼が強固となるであろう。鍼灸院からの施術情報提供書(ご高診願い)を介した連携が有用である。
PROFILE
1997年より大磯町に施術所を構える。日本プライマリ・ケア連合学会会員,病鍼連携連絡協議会世話人代表。臨床の傍ら,複数の専門学校非常勤講師,講演活動をしている。はり師,きゅう師,あん摩マッサージ指圧師。
POLICY・座右の銘
鉄硯未穿(鉄のすずりを未だ穴を開けるほども学んでいない様)
はり師,きゅう師,あん摩マッサージ指圧師は,国家資格であり,鍼灸・マッサージは,その免許保持者が実施する療法である。養成施設は現在全国に専門学校76校,大学13校,盲学校・視覚支援学校ではあん摩マッサージ指圧課程を有する学校が84校,あん摩マッサージ・はりきゅう課程を有する学校が56校存在する。国家試験は年に1回実施されている。巷に多くみられるクイックマッサージ,整体,カイロプラクティックなどはわが国の公的資格ではなく,教習規定もないため,質が保障されていないという点で,注意を要する。
多くの研究から,鍼や灸の疼痛抑制機序として,求心性神経線維を介して疼痛抑制系,筋骨格系,自律神経系,ホルモン系,免疫系などに働いている可能性が指摘されている。
鍼による疼痛抑制作用は大きくわけて,上行性疼痛抑制機構,下行性疼痛抑制機構,神経伝達物質性疼痛抑制機構,その他に大別されている1)〜3)。
灸の作用機序は,熱傷と同様に高熱の灸刺激が副腎皮質からコルチゾールを分泌させ,炎症を抑制する。痛みに対しては一種のストレス鎮痛が働く。灸の熱により温度受容体であるTRPV1やTRPV2受容体を刺激することが想定されている。特にTRPV1受容体は痛みの受容体でもあり,ポリモーダル受容器との関係が注目されている4)。
マッサージに関しては作用機序の研究は途上であり,臨床レベルで頭痛,首痛,腰痛,関節症,末期癌患者の不安,線維筋痛症の不安,抑うつ,等への低いエビデンスが知られている5)。
鍼治療により想定される有害反応は,①全身性の副作用:疲労・倦怠感(8.2%),眠気(2.8%),主訴の一時的悪化(2.8%),刺鍼部の瘙痒感(1.0%),めまい・ふらつき(0.8%),気分不良・嘔気(0.8%),頭痛(0.5%)など,②局所性の有害反応:微量出血(2.6%),刺鍼時痛(0.7%),皮下出血(0.3%),施術後の刺鍼部痛(0.1%),皮下血腫(0.1%)などである。このほかにも稀に,金属アレルギー6),刺鍼事故として気胸,切鍼(鍼の遺残)が発生しうる。