監修: | 日本プライマリ・ケア連合学会 |
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編集: | 加藤光樹(まどかファミリークリニック) |
喜瀬守人(編集責任・川崎医療生活協同組合久地診療所) | |
長嶺由衣子(東京医科歯科大学国際健康推進医学) | |
福井慶太郎(福井内科消化器科クリニック) | |
三浦太郎(富山市まちなか診療所) | |
宮地純一郎(北海道家庭医療学センター) | |
山本 祐(自治医科大学地域医療学センター総合診療部門) | |
判型: | B5判 |
頁数: | 224頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2021年10月01日 |
ISBN: | 978-4-7849-5911-2 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
第1回 多様性の中に見える未来
第2回 患者中心の医療の方法〈総論〉─「疾患の治療」だけでなく「病む人へのケア」を
第3回 プライマリ・ケアらしい女性医療─日常診療の中で女性のライフステージを意識する
第4回 診療所救急〈総論〉─動きながら考える Triage & Action !
第5回 診療所救急〈高齢者・在宅〉─診療所における救急対応および予防的介入のコツ
第6回 診療所救急〈内科〉─各種症状→ショック→心停止の流れを断ち切る
第7回 診療所救急〈小児〉─30秒で見た目(ABC)をチェック!!
第8回 診療所救急〈マイナーエマージェンシー〉─外科系マイナーエマージェンシー診療修得への道のり
第9回 アドバンス・ケア・プランニングとは?─人生会議を始めよう!
第10回 ACP(人生会議)のダークサイド─そのACP,だれのため?
第11回 臨床倫理─モヤモヤに気づいて立ち止まることが重要
第12回 「総合医育成プログラム」とは
第13回 スポーツ医学sports and exercise medicine〈総論〉─プライマリ・ケアとスポーツ医学
第14回 スポーツと内科系疾患─内科的問題の解決で,命を守り,パフォーマンスを向上させる!
第15回 女性と運動─正しい運動で健康なからだを!
第16回 小児のスポーツ障害〈障害要因と障害予防〉(上)─障害要因の除去をめざして
第17回 小児のスポーツ障害〈小児の成長発育と骨端症〉(下)─個々の成長発育をイメージする
第18回 プライマリ・ケアにおけるアンチ・ドーピング─選手が安心して受診できる環境づくりを
第19回 医師が多職種から求められていること─多職種が医師に求める役割はコンテキストにより異なる
第20回 医師として多職種連携にどう関わるか─医師の持つ特性を意識して,多職種連携に関わろう
第21回 グループ診療─働き方改革のひとつの方法
第22回 都市部での多職種連携の実践─都市部こそ総合診療医が求められる時代に
第23回 多職種連携教育が声高になってきた背景と今の教育─連携教育の場としてのプライマリ・ケアの強み
第24回 統合的ケア・総論─連携で生じた問題を解決するための枠組み
第25回 Patient Experience(PX)に関する研究─国際的に注目を集める患者視点の医療の質指標
第26回 現場の臨床疑問から研究を実施する─高齢者に対する着衣の上からの血圧測定は正確か?
第27回 診療所ネットワークによる臨床研究〈在宅コホート研究〉─地域における研究ネットワークをつくろう
第28回 ICPCを用いたプライマリ・ケアにおける研究─家庭医療における受診理由の意味とは
第29回 多疾患併存状態(マルチモビディティ)に関する研究─プライマリ・ケアにおける最重要研究課題の1つ
第30回 EBM〈総論〉─開業医やプライマリ・ケア医はEBMをどう役立てられるか
第31回 EBM〈治療〉─定量的な評価を行い,患者への適用を考える
第32回 EBM〈実践〉─ベイズの定理の活用
第33回 EBM〈診断〉─所見の感度・特異度を理解して,診断の一助にしよう
第34回 EBMを活用してチーム医療を充実させる─Step1とStep5の共有がチーム力を高める
第35回 患者中心の医療の方法─「病い体験」を探る 患者の語りを統合して理解する
第36回 患者中心の医療の方法〈コンテクストを探る〉─多種多様な患者背景を探る
第37回 患者中心の医療の方法〈合意点を探る〉─患者とともに意思決定を行うために
第38回 プライマリ・ケア医のためのエコー〈総論〉─誤嚥性肺炎へのケア向上をめざしたエコー活用
第39回 プライマリ・ケアで診る運動器疾患〈膝関節〉─運動器疾患に対する超音波診断装置の活用
第40回 “便秘”にエコー─あるのかないのか,硬いのか軟らかいのか,それが問題だ
第41回 プライマリ・ケア医のための肺エコー〈肺炎〉─肺炎の検出力向上と輸液量の決定のために
第42回 プライマリ・ケアにおける頭頸部エコー〈小児の耳下腺腫脹〉─流行性耳下腺炎と反復性耳下腺炎の見分け方
第43回 予防医療〈総論〉─科学的根拠に基づく予防医療と臨床倫理
第44回 スクリーニングの利益と害を見積もる─個々におけるバランスを考慮する
第45回 成人における2型糖尿病スクリーニング─根拠ある予防医療の実践
第46回 神経管閉鎖障害の予防のための葉酸摂取~受診理由の一歩先に~
第47回 予防医学〈喫煙〉─プライマリ・ケアにおける禁煙のエビデンス
第48回 わが国における健診(検診)の現状と今後の課題─かかりつけ医が健診結果の確認とフォローを
第49回 予防医学〈腹部大動脈瘤スクリーニング〉─プライマリケアにおける腹部大動脈瘤スクリーニングのエビデンス
第50回 慢性閉塞性肺疾患(COPD)スクリーニング─科学的根拠に基づいたアプローチ
第51回 こどもの予防医療─小さなおとなではない!?
第52回 不健康な飲酒:Unhealthy use of alcoholのスクリーニング─根拠ある予防医療の実践
第53回 診断学を取り巻くこの20年の出来事,そして日本では─診断の表側と裏側
第54回 現代の診断エラー,そして臨床診断改善学会─診断エラーとその周辺をよりよく理解するために
第55回 慢性疾患患者の継続診療で見落としを避ける「診断戦略」─いつもみている患者の異常を拾い上げるために
第56回 診断とAIとの協働,現状と未来展望─AIに診断力を奪われるのではなく,AIにより診断力を強化する時代へ
第57回 精度の高い病歴の技術に必要なことは?─病歴は聴取するものではなく,相互作用的に作り上げるものである
第58回 未来の身体診察と診断─「診察前確率」と病歴・身体所見・検査それぞれの親和性
第59回 未分化な問題と診断学─複数の未来を見据えたケア
第60回 日本における診断学教育の活動の実際(学生〜初期研修医)─指導対象者のレベルに合わせた教育を意識する
第61回 診断プロセスへのフィードバック─より良いフィードバックを
第62回 日本における診断学教育の活動の実際─診断戦略開発カンファレンス,reflection,そして最近接発達領域
第63回 観察力の教育と診断─ウィリアム・オスラーと絵画鑑賞
第64回 医学教育における診断学教育の展望─エビデンスに基づく医学教育の実践を
治療と仕事の両立支援
第65回 患者の治療と仕事の両立支援(総論・前編)─仕事を考慮した治療選択の提示で,働く患者への社会的処方を
第66回 患者の治療と仕事の両立支援(総論・後編)─医療用語を仕事の作業の言葉に翻訳した主治医意見書が鍵
第67回 プライマリ・ケア医ができる職場との連携─職場の読み手に届く情報提供を
第68回 がん治療と就労の両立支援─「疾病性の言葉」から「事例性の言葉」への翻訳の重要性
第69回 職域で精神面の問題を認めた場合の治療と仕事の両立支援─職域におけるプライマリ・ケア医への期待
第70回 生活習慣病の重症化予防のために─健診・プライマリ・ケア(治療)・職場の連携
第71回 プライマリ・ケア医がおさえるべき腰痛と仕事の両立─慢性化の要因把握とセルフエクササイズの導入
第72回 苦悩と癒し[1]─プライマリ・ケアと苦悩
第73回 苦悩と癒し[2]─苦悩をかかえる患者の癒し
第74回 苦悩と癒し[3]─患者への関わりの深さと自己認識
第75回 家族志向のケア─家族が患者に与える健康への影響
第76回 家族志向のケア[2]─ヘルスエキスパートと真の顧客
第77回 家族志向のケア[3]─家族ライフサイクル
第78回 家族志向のケア[4]─家族の感情に配慮する
SDHと社会的処方
第79回 健康の社会的決定要因(SDH)と「社会的処方」─保健・医療・介護・福祉・地域社会が一体となりSDHに対応する
第80回 「社会的処方」~医師会の取り組み事例─栃木県・宇都宮市医師会の場合
第81回 「社会的処方」~病院の取り組み事例─岩手県一関市・藤沢病院の場合
第82回 「社会的処方」~診療所の事例─東京都国立市・新田クリニックの場合
第83回 「社会的処方」~まちづくりの視点から─「社会的処方」を文化にする
第84回 「社会的処方」の地域共生社会推進に向けた有用性─医療職への示唆
第85回 行動変容〈総論〉─「わかっちゃいるけどやめられない」に向き合う
第86回 行動変容に取り組む医療者の心の持ち方─行動を変えない患者にイライラしてしまう!
第87回 患者の動機を見出す,引き出す─生活指導のマンネリ化を打開しよう!
第88回 生活の中で行動を変える仕組みづくり─患者のやる気は感じられるのに変わらない!
第89回 継続性の重要性と継続を促すための関わり─受診を自己中断した患者が突然受診した!
第90回 「もう別にいいんです」─セルフ・ネグレクトの患者とどう関わるか
第91回 在宅医療の諸相(1)(導入〜維持)─家族ケアと多職種連携が鍵になる
第92回 在宅医療の諸相(2)(急性期)─在宅患者の発熱 在宅で治療する?病院へ送る?
第93回 在宅医療の諸相(3)(看取り)─自宅で看取るということ,看取りを支えるということ
第94回 施設での在宅医療─施設を取り巻く社会に目を向ける
第95回 制度の活用─訪問看護の制度を理解し,正しい指示書の記載を!
第96回 慢性疾患ケアモデル〈総論〉─多面的な介入を考えるためのフレームワーク
第97回 慢性疾患ケアモデルを用いた日常診療の振り返り(1)─慢性疾患ケアモデルを用いて外来診療を俯瞰する
第98回 慢性疾患ケアモデルを用いた日常診療の振り返り(2)─「地域住民のお節介」という貴重な資源を考察する
第99回 慢性疾患ケアモデルを用いた日常診療の振り返り(3)─ケアチームの継続性に支えられた新たな医師患者関係
第100回 慢性疾患ケアモデルを用いた日常診療の振り返り(4)─地方の診療所での一例
本書は日本プライマリ・ケア連合学会の第2代理事長である丸山 泉先生の発案でスタートした週刊日本医事新報の連載「プライマリ・ケアの理論と実践」を一冊にまとめたものである。この企画を実現するにあたり,プライマリ・ケアの理論をよく理解し,現場で常に実践しているメンバーを人選することが何より大切になった。その役割は学会の総務担当理事の喜瀬守人先生が担うこととなったが,実に幅広い領域から素晴らしい執筆者が選ばれたことを改めて実感している。
プライマリ・ケア領域をわかりやすく説明する良書は世にいろいろとあるが,本書は日々活用できる知識や技能はもちろんのこと,プライマリ・ケアを特色づける理論的な枠組みまで実に幅広く網羅しているのが特徴であろう。しかも,その内容は健康作り・予防医療からコモンディジーズ,小児医療,思春期の医療,セクシュアルヘルス,健康の社会的決定要因,患者中心の医療の方法,家族志向型ケア,コミュニティーを対象としたケアと縦横無尽の広がりを見せており,あたかもプライマリ・ケアの宝箱を開けたような感がある。
そして,2020年から2021年にかけて,コロナ禍の中で公衆衛生や予防医療とプライマリ・ケアの連携の重要性が浮き彫りになってきた。医療のあり方に大きな転換が求められる今こそ,プライマリ・ケアを真剣に学び,自らの診療の基盤にすることを期する皆さんにぜひ本書を送りたい。
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。