表皮水疱症は,表皮基底膜領域蛋白をコードする遺伝子の変異によって皮膚が脆弱となり,全身に水疱やびらんが出現する疾患である。水疱が形成される際の電子顕微鏡的なレベルによって,単純型・接合部型・栄養障害型・キンドラー型の四大病型に大別される1)。国の指定難病である。
表皮水疱症では,出生時から軽微な物理刺激によって全身の皮膚に水疱やびらんを生じる。病型によって予後や合併症が異なっており,形態学的・遺伝学的検索を行って病型を決定する。形態学的検索には凍結皮膚による蛍光抗体法と電子顕微鏡観察があり,前者では欠損あるいは発現減弱蛋白を同定,後者では水疱形成のレベル(表皮基底細胞内,透明層,基底板直下)を決定する。また,末梢血由来ゲノムDNAを用いて遺伝子変異検索を行い,原因となる変異を同定する。原因遺伝子は15種類以上あり1),全エクソーム解析による検索が効率的である。全エクソーム解析で得られた候補変異を,サンガーシーケンシングで確認する。
根治療法はないため,皮膚のびらんや水疱部位に対する対症療法を行う。表皮水疱症の皮膚病変に対する被覆材の選択について指導を行った場合には,在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料(1000点)が算定できる。毎日の処置に必要なガーゼ等の衛生材料はこの管理料に含まれており,次回の外来受診まで必要な材料を提供する。特定保険医療材料(多くの被覆材)はこの管理料と別に算定でき,必要分を提供することができる。
また,2019年にJ-TEC社の「自家培養表皮ジェイスⓇ」を用いた自家培養表皮移植術が保険適用となった2)。適応となる病型は接合部型と栄養障害型であり,難治性あるいは繰り返すびらん・潰瘍に用いることができる。表皮水疱症では,一部の皮膚で遺伝子変異の自然治癒が稀に起こり,島状に正常皮膚が出現する(復帰変異モザイク)。表皮水疱症における自家培養表皮移植は,患者の復帰変異モザイク部位から皮膚を採取し,自家培養表皮を樹立して患者本人のびらん・潰瘍に移植するという戦略をとる。
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