椎間板の外側線維輪に亀裂が生じ,中心部分の髄核が膨隆・突出・逸脱し,馬尾,神経根を圧迫した結果,腰下肢痛を呈した状態である。最近の研究では,その髄核に様々な炎症を引き起こす炎症性サイトカインが含有されており,その化学的炎症と物理的圧迫が主病態であると考えられている。20~40歳の男性に多く(女性の2~3倍),L4/5(第4腰椎と第5腰椎間),L5/S1(第5腰椎と第1仙椎)椎間高位に好発する。また,遺伝的要因,生活習慣(重労働,喫煙)の関与が示唆されている。時に小中学生などの若年性ヘルニア,60~85歳の高齢者の椎間板ヘルニアも散見される。
下肢痛は神経根支配領域の疼痛が特徴的で,障害神経根に合致する下肢筋力,感覚低下を呈する場合がある。下位の椎間板ヘルニアの場合は,患下肢伸展挙上テスト(SLRテスト)が陽性,一方で上位の椎間板ヘルニアの場合は大腿神経伸展テスト(FNSテスト)が陽性になることがある。L4/5高位の椎間板ヘルニアではL5神経根が圧迫され,下腿外側の疼痛・感覚低下,母趾背屈筋力の低下を認めることがある。L5/S1高位の椎間板ヘルニアではS1神経根が圧迫され,下腿腓腹部の疼痛,足部外側の感覚低下,母趾底屈筋力の低下を認めることがある。MRIが確定診断に不可欠である。稀ではあるが,中心性の巨大ヘルニアで高度下肢麻痺や膀胱直腸障害を呈することがあり,十分に注意を要する(48時間以内の緊急手術の対象)。若年性椎間板ヘルニアでは,著明な体幹前屈制限,腰股伸展硬直を示すことがある1)。
程度の軽い椎間板ヘルニアでは保存治療で軽快する場合が多い。まずは最低3カ月の保存療法を試みることを推奨する。その理由として,保存的に椎間板ヘルニアの自然消褪が認められるからである。保存療法は温熱療法や牽引などの理学療法,歩行訓練,体幹筋訓練などの運動療法を行う。痛みに対して消炎鎮痛薬,プレガバリン,弱オピオイドを用いる。ブロック療法として硬膜外ブロック,選択的神経根ブロックがある。保存治療に抵抗する場合は椎間板内酵素注入療法,手術も考慮する。
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