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狭窄性腱鞘炎,ドケルバン病[私の治療]

No.5090 (2021年11月13日発行) P.38

酒井昭典 (産業医科大学整形外科学教室教授)

登録日: 2021-11-13

最終更新日: 2021-11-09

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  • 狭窄性腱鞘炎は腱と靱帯性腱鞘との間に炎症が起こった状態で,腱の円滑な滑走が障害され,疼痛と腫脹を呈する疾患である。中年以降の女性や手作業労働者に多い。糖尿病,リウマチ,透析患者では複数指に生じることがある。ドケルバン病は,短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が通過する橈骨茎状突起部にある手背第1コンパートメントに生じる狭窄性腱鞘炎である。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    屈筋腱の狭窄性腱鞘炎はMP関節掌側に生じることが多い。MP関節掌側に疼痛と腫脹を呈する。同部位に圧痛があり,肥厚した靱帯性腱鞘(A1 pulley)を触知する。小さな皮下腫瘤を触れる場合は腱鞘ガングリオンが存在していることが多い。手指の屈伸で引っ掛かるようになるが,これをばね現象(弾発現象)という。さらに進行すると,屈曲位からの自動伸展が困難となり,他動でないと伸展できなくなる。さらに進行するとPIP関節が屈曲拘縮を起こしてくる。

    ドケルバン病は手背第1コンパートメントに圧痛と腫脹があり,母指の動きで疼痛が誘発される。

    【検査所見】

    単純X線では特に異常を認めない。超音波検査で,腱鞘ガングリオンがあれば境界明瞭な低エコー領域として認められる。ドケルバン病では,Eichhoffテスト(母指を他の4指で握り込んで手関節を尺屈するテスト)などで疼痛が誘発される。圧痛の部位や単純X線像から,母指CM関節症や舟状骨骨折・偽関節を除外することが必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    軽症例では炎症を軽減させることを基本方針とする。腱と靱帯性腱鞘との間に炎症があるので,まずは手の酷使を避けるなど,炎症を惹起している原因を除去し鎮静化させる治療を考える。ドケルバン病では,局所安静目的でシーネや装具による母指と手関節の外固定を試みる。妊娠中や授乳中に生じたドケルバン病では,これが唯一の治療法になることもあるが,一般患者には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の外用や内服で治療する。治療抵抗性であれば,ステロイドを腱鞘内に注射する。

    重症例ではNSAIDsの外用や内服による薬物治療に抵抗性を示すことが多い。ステロイドを腱鞘内に注射する。注射は有効率が高く,3カ月以上無症状になることが多い。それでも改善しない場合や再発を繰り返す場合は,局所麻酔下にて腱鞘切開術を行う。

    【治療上の一般的な注意&禁忌】

    職業やスポーツで手を酷使する人では,局所を安静にする指導が必要になる。糖尿病,リウマチ患者では,疾患を良好にコントロールする必要がある。ステロイドの腱鞘内注射は感染性腱鞘炎に行ってはならず,非感染性のものに限る。早期に鎮痛効果を獲得したい場合には注射は有効である。

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