高カリウム血症の定義は,成書1)には血清カリウム(K)値5.5mmol/L以上とされているが,他方血清K値の正常値は3.5~5.0mmol/L2)とされており,5.0mmol/Lを超えると注意深い観察が必要とされるというのが大筋の考え方であろう。
高カリウム血症をきたす状態は,K排泄が主に腎臓でなされるため,ほとんどの場合基礎疾患に腎機能障害が存在し,さらに薬剤,糖尿病,高齢などの因子が加わることが多い。「高血圧で通院中〔アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)服用〕の高齢者が腰痛をきたした〔例:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を服用した〕」「糖尿病の高齢者がいつもより多く果物を食べた」などが典型的なシナリオである。
診断はこれらの状態をみたときに高カリウム血症の可能性を疑うことが大切で,疑った場合には低カリウム血症と同様に,バイタルサイン,血液検査,心電図所見をチェックする。心電図変化は血清K値が約6mEq/LでT波増高,約7mEq/LでP波消失やPR延長,約8mEq/LでQRS開大,それ以上では高度徐脈や心室細動などが起こると言われているが,心電図変化は“鈍感だ”と悪名高く,血清K値が6.8mmol/Lを超えた患者のたった55%だけがT波増高を示したという症例報告もある。心電図変化を示す患者間において,K値には大きなばらつきがあり,高カリウム血症の発症速度と低カルシウム血症やアシデミアや低ナトリウム血症が同時に存在するか否かが,そのばらつきに関連すると言われている。特に血液透析患者と慢性腎不全患者は,心電図変化をきたさない可能性がある。したがって,高カリウム血症を疑った場合には,心電図変化がなくても血清K値をチェックすることと,血清K値が6.0mEq/L以上でかつ心電図変化がある場合は,緊急治療が必要であると考えることが安全である。
表3)に糖尿病,心不全,慢性腎不全などの高カリウム血症の危険が高いと考えられる患者に,ARBやアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)などレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬を処方するときの注意事項を示す。
高カリウム血症の治療は,①高カリウム血症の心筋細胞興奮作用の抑制,② K+を細胞内へ移動させ血清K+を正常化する,③体内からK+を除去する,の3つにわけられる。
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