【質問者】
和田健彦 東海大学医学部腎内分泌内科准教授/ 腎・血液透析センター長
【実臨床では扁摘パルス療法はスタンダード治療,一方で分子標的治療薬がいよいよ臨床適用へ】
IgA腎症では,上気道感染を契機に肉眼的血尿がみられたり,尿所見異常の増悪を認めることから,粘膜免疫応答異常と糖鎖異常IgA1産生の関与が考えられています。これまでに,特定の外来抗原は同定されておらず,toll like receptor(TLR)などの自然免疫活性の関連が示唆されています。扁桃摘出(扁摘)後に血中総IgAのみならず糖鎖異常IgA1が低下する症例を考慮すると,病態の粘膜主座は扁桃であり,扁桃における外来抗原の曝露がTLRの活性化を誘発し,糖鎖異常IgA1の産生が亢進する可能性が示唆されています。
実際にわが国では,口蓋扁桃摘出術+ステロイドパルス併用療法(扁摘パルス療法)の有効性が多施設から多数報告されています。2008年に施行された全国的アンケート調査では,約7割弱の施設で扁摘パルス療法が実施されており,わが国における標準的治療法として普及していることがわかります。前向きRCTの解析結果が待たれるところですが,近年1065名の日本人を対象とした大規模後ろ向き研究において,扁摘パルス療法の腎機能低下抑制効果が明確に示されたことは意義深いでしょう。これらのエビデンスから,海外のKDIGO(Kidney Disease:Improving Global Outcomes)ガイドラインが改訂され,わが国をはじめとする扁摘パルス療法が施行できる施設であれば,症例に応じて扁摘パルス療法を推奨すると明文化されました。
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