【わが国では2021年10月時点で,レムデシビルのみが承認されている。適応は入院を要する肺炎患者で,酸素投与が必要な症例に可及的速やかに投与することで,臨床症状の改善に効果がある可能性が示唆されている】
2021年10月11日時点で,わが国で承認されている新型コロナウイルスに対する抗ウイルス薬として「レムデシビル」があります。レムデシビルはRNA合成阻害薬で,2020年5月7日に特例承認,2021年8月4日に保険適用承認となっています1)。
適応は入院を要する肺炎患者ですが,人工呼吸器が必要となった重症例に対しては大きな効果が期待できません。酸素投与が必要な症例に可及的速やかに投与することで,臨床症状の改善に効果がある可能性が示唆されています1)。
投与方法として,通常,成人および体重40kg以上の小児には,投与初日に200mgを,投与2日目以降は100mgを1日1回点滴静注します。体重3.5 kg以上40kg未満の小児には,投与初日に5mg/kgを,投与2日目以降は2.5mg/kgを1日1回点滴静注します。目安として5日目まで投与し,症状の改善が認められない場合には10日目まで投与します1)。
海外で行われた試験結果,ならびに認められた効果は以下になります。
中国で行われたランダム化比較試験では,主要評価項目である28日目までの臨床症状の改善は認められませんでした。しかし,発症から10日以内の患者では,レムデシビル群のほうが臨床症状の改善は早い傾向が認められました2)。
肺炎で入院した患者1062名が登録された米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の臨床試験(ACTT-1)では,プラセボ群は臨床症状の改善に15日要したのに対し,レムデシビル群では10日に短縮されました。ただしサブグループ解析にて,薬剤投与時に気管挿管もしくは体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)使用中の患者では,臨床症状の改善までの期間の短縮は認められませんでした3)。
世界保健機関(WHO)とその協力機関が実施した30カ国405医療施設の入院患者を対象とした非盲検の比較試験(Solidarity trial,連帯試験)では,レムデシビルに致死率への有効性は示されませんでした4)。
中等症肺炎患者を対象に,レムデシビル10日間投与群,5日間投与群,標準治療群の3群にわけて比較した試験(NCT04292730)では11日目の評価で,5日間投与群は標準治療群と比較して臨床症状の改善に効果があることが示されました。一方,10日間投与群と標準治療群との間に有意差は認められませんでした5)。
肺炎(SpO2<94%)の入院患者を対象に,レムデシビル10日間投与群と5日間投与群で比較した試験(NCT04292899)では,14日目の評価で臨床症状の改善に有意差が認められませんでした6)。
【文献】
1)厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID- 19)診療の手引き・第5.3版(2021年8月31日発行).
[https://www.mhlw.go.jp/content/000829136.pdf]
2)Wang Y, et al:Lancet. 2020;395(10236):1569-78.
3)Beigel JH, et al:N Engl J Med. 2020;383(19): 1813-26.
4)WHO Solidarity Trial Consortium:N Engl J Med. 2021;384(6):497-511.
5)Spinner CD, et al:JAMA. 2020;324(11):1048-57.
6)Goldman JD, et al:N Engl J Med. 2020;383 (19):1827-37.
【回答者】
石金正裕 国立国際医療研究センター国際感染症センター