心室期外収縮とは,通常の心室波の興奮より早期に生じ,先行する心房波を伴わない収縮であり,加齢とともに増加することが知られている。健常人にも認められる頻度の高い不整脈である。器質的心疾患を伴うものと伴わないもの(特発性)に大別され,特発性は一般に予後良好とされるが,頻回に出現する心室期外収縮によって頻拍誘発性心筋症をきたす例や心室頻拍,心室細動に移行する例も稀に存在する。
自覚症状がない場合も多いが,症状を有する例では,動悸や脈が飛ぶ,胸部違和感などの症状を訴える。
心電図上,予期される洞調律のQRS波よりも早く,洞調律とは異なる幅の広いQRS波形を認める。起源が心室(ヒス束以下)の場合に心室期外収縮と診断される。心臓超音波検査で器質的心疾患の有無を調べる。BNP値や胸部X線から心不全の合併の有無を調べる。血液検査で,低カリウム血症や低マグネシウム血症などの電解質異常がないか確認する。24時間心電図検査で頻度を確認する。
まず,器質的心疾患の有無を評価することが重要であり,心臓超音波検査やBNP値は治療方針の決定に有用である。器質的心疾患がない場合には薬物療法が無効で,QOLの低下を伴う症例ではカテーテルアブレーション治療を考慮する。器質的心疾患がある場合には,薬物療法とともにカテーテルアブレーション治療を考慮する。
アブレーション治療は不整脈を根治できるため,自覚症状から解放されるだけでなく,薬剤を長期内服することで生じる経済的負担がなくなるという面でも優れており,その有用性は高いと考えられている。また,心室期外収縮が契機となり多形性心室頻拍や心室細動が誘発される場合には,その心室期外収縮をアブレーション治療することにより致死性心室性不整脈を予防可能である。頻発する心室期外収縮(約1万拍/日以上,あるいは1日総心拍数の約10%以上)は心機能低下を惹起する可能性があること,さらに心不全治療の心臓再同期療法中に心室期外収縮が頻発し両心室ペーシング率が低下すると,心臓再同期療法の効果が減少することもあり,その際にはアブレーションによる治療が有効である。
アブレーション治療前には,心室期外収縮の起源推定のために心電図検査にて心室期外収縮の12誘導心電図波形をとらえること,そして期外収縮の波形が常に同一(単形性)であることを24時間心電図検査にて確認しておくことが大切である。心室期外収縮の形が複数存在する場合には,アブレーション治療の成功率は低下する。
治療上の一般的注意として,抗不整脈薬を漫然と投与し続けないことが挙げられる。また,心機能低下例に対してNaチャネル遮断薬の使用は禁忌である。
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