悪性黒色腫はメラノサイトががん化した腫瘍である。わが国における罹患率は10万人当たり1~2人程度で,年間600人前後が死亡する。日本人発症例の約半数が掌蹠,指趾,爪に生じる。紫外線や外的刺激・外傷などによる遺伝子異常が主な原因とされており,特にBRAFはメラノーマにおいて重要ながん遺伝子とされ,阻害薬が治療適応になっている。わが国でのBRAF変異陽性率は30%弱程度である。
治療は切除可能であれば外科的切除が基本である。リンパ管と親和性が高く,リンパ行性に転移しやすいため,センチネルリンパ節生検を行うことが多い。病変部の厚みが4mm以下で潰瘍を伴っていなければ,5年生存率は80%以上である。
進行例には,免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ,ペムブロリズマブ,イピリムマブ)あるいは分子標的治療薬〔BRAF阻害薬(ダブラフェニブメシル酸塩,エンコラフェニブ),MEK阻害薬(トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物,ビニメチニブ)〕で治療する。これらの新薬は,従来用いられていたダカルバジンよりも効果が高い。
典型例では,濃淡不整で左右非対称な黒褐色斑から始まり,さらに進行すると隆起性の結節や潰瘍などを呈する。短期間でのサイズの増大(6mm以上)はハイリスクとされる。
爪の症例では黒色の縦線(黒色線条)を呈し,爪の基部の幅が先端より広い場合や爪周囲の皮膚に色素の染み出しを伴う場合は早期病変の可能性がある。
稀に無色素性のことがあり,紅色の肉芽様外観を呈することもある。
ダーモスコピー(偏光下での拡大鏡を用いた観察)が診断に有用である。
浸潤が疑われる場合は,病初期から転移をきたすこともあり,CTやPETを用いた全身検索を行うことが重要である。
脳転移のスクリーニングにはMRIを撮像する。
日本皮膚科学会,日本皮膚悪性腫瘍学会から「皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版メラノーマ診療ガイドライン2019」1)が策定されており,これを基準に治療方針を決定する。
治療の基本は手術である。原発巣の厚みが0.75mmを超える症例ではセンチネルリンパ節生検を検討し,BRAF変異検索を行う。
病期がⅢ以上であれば,術後補助療法を検討する。
進行例では,免疫チェックポイント阻害薬,BRAF変異があればBRAF/MEK阻害薬が適応である。脳転移や骨転移には放射線療法が行われる。
メラノーマの可能性が示唆される場合は,速やかに専門施設に紹介するのが望ましい。
術前の臨床写真とダーモスコピーが必須であり,必ず切除前の臨床写真およびダーモスコピー写真を記録する。
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