「かぜ症候群」は,咽頭違和感・咽頭痛,鼻汁,鼻閉,くしゃみ,咳嗽,喀痰,頭痛などの上気道や下気道を中心とした局所症状が中心であるが,全身倦怠感,発熱,悪寒などの全身症状も呈することもある症候群であり,短期間で自然に軽快するウイルス感染が原因として多い,というとらえ方が基本となる。また,「かぜ症候群」ではない疾患が隠れている可能性を常に念頭に置き,対症療法でマスクされて診断の遅延を招来しないように心がける。
咽頭違和感・咽頭痛,鼻汁,鼻閉,咳嗽などの上気道症状が主体で,喀痰などの下気道症状を呈する。多くが数日~1,2週間程度,長引く場合でも2,3週間程度で自然に軽快するが,二次性細菌感染を呈する症例もあるため,「受診時でどの時相であるか」「細菌感染の有無」の見きわめが大切である。
原因となるウイルスは季節により異なり,秋から冬期にはライノウイルス,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以外のコロナウイルス,RSウイルス,パラインフルエンザウイルス,ヒトメタニューモウイルスなどがあり,夏期にはエンテロウイルスやアデノウイルスなどが多く,いずれも多くは自然に軽快する。
かぜ症候群を呈するウイルスに対する抗ウイルス薬は基本的にはないため,治療は症状緩和を目的とした対症療法が基本であり,二次的細菌感染(副鼻腔炎や気管支炎,肺炎)や一部の細菌性咽頭炎(溶連菌,マイコプラズマなど)以外では抗菌薬は必要ない。なお,インフルエンザは,発熱,関節痛や筋肉痛などの強い全身症状を呈することが多いが,軽微な症状の場合もあり,注意する。抗インフルエンザ薬のあるインフルエンザやCOVID-19の治療については別稿に譲る。
急性の咽頭症状,鼻症状,頭痛,全身倦怠感などの症状が発現し,Centor criteriaなどを参考にしつつ,細菌感染を疑うような膿性鼻汁や膿性喀痰,扁桃の腫大や白苔がなく,インフルエンザやCOVID-19の積極的な除外などから「かぜ症候群」を疑う。受診したタイミングにより症状や対応が異なるため,症状出現からの症状の変化を詳細に確認し,症状に応じて対症療法を検討する。十分な安静と睡眠,水分補給などの指導を全例で行い,症状が既にピークを越えている場合などでは特に無治療による経過観察も十分に説明の上で検討する。
なお,対症療法として解熱薬や鎮咳薬などを用いる場合は,使用する薬剤の副作用について,また他疾患の症状である場合はマスクされて診断が遅延する可能性があり,十分な説明と注意が必要である。よく用いられる総合感冒薬は,サリチルアミドやアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬と抗ヒスタミン薬などの配合薬が多いため,各種成分による副作用も十分認知しておく。
症状が遷延する場合は,咳嗽であれば喘息や咳喘息,副鼻腔気管支症候群などの上下気道疾患や,鼻炎ではアレルギー性鼻炎,息切れであれば喫煙者では慢性閉塞性肺疾患(COPD),高齢者や易感染性宿主の場合などでは,細菌性気管支炎,肺炎,気管支拡張症,間質性肺炎などの他の下気道や肺実質の疾患の鑑別が重要となるため,適宜診断に必要な検査を追加する。
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