【質問者】
冨本秀和 三重大学大学院医学系研究科神経病態内科学 教授
【ターゲットとなるアミロイドの凝集段階と臨床試験の介入時期が重要】
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)の病理学的特徴としては,アミロイドβ蛋白(Aβ)から成る老人斑,タウ蛋白(tau)から成る神経原線維変化,さらに神経細胞死が挙げられます。病態生理においては,Aβがtauに先行して異常凝集して神経細胞を傷害する過程が重要な役割を果たすと考えられています(アミロイド仮説)1)。
抗アミロイド抗体医薬は現在まで多数が開発されているものの,開発の中止・中断が相次いでいます。初期に開発されたsolanezumabは軽度ADを対象とした第3相試験が開始されましたが,2016年11月,認知機能低下を抑制できないことが報告されました2)。その後,アミロイドに焦点を当てた臨床試験の対象は,より早期のAD患者へ移ってきました。また,solanezumabは主に単量体を標的にしていることから,Aβ凝集体を選択的に標的とするcrenezumab3)やaducanumab4)が次の候補として期待されました。しかし,プロドローマル期,あるいは軽度AD患者を対象としたcrenezumabの第3相試験は認知機能低下の進行抑制が基準に達しないことから中止が発表されました5)。
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