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食物経口免疫療法は患児を治癒に導くことができるのか?

No.5104 (2022年02月19日発行) P.49

今井孝成 (昭和大学医学部小児科学講座教授)

小池由美 (長野県立こども病院アレルギー科部長)

登録日: 2022-02-18

最終更新日: 2022-02-15

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  • 食物経口免疫療法(oral immunotherapy:OIT)は患児を治癒に導くことができるのでしょうか。
    長野県立こども病院・小池由美先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    今井孝成 昭和大学医学部小児科学講座教授


    【回答】

     【一部の症例には治療効果はあるが,経過中の症状誘発は必須でありリスクが高い治療である】

    小児の食物アレルギーは,抗原によっては自然寛解が期待できるとされていますが,重症な例では年齢を経ても寛解が難しい例があります。OITは重症例の食物アレルギーに対する新規治療として注目され,鶏卵,牛乳,小麦,ピーナッツなどの抗原で海外だけでなくわが国からも多くの臨床研究の成果が報告されています。一部の症例には治療効果があるのは明らかですが,経過中の症状誘発は必須なため「食物アレルギー診療ガイドライン2021」では一般診療として推奨されていません1)。しかし,重症の食物アレルギー児に対して研究的診療として広く実施されている現状があります2)。OITの機序は不明な点も多いですが,特異的IgE,IgG,IgG4抗体,マスト細胞,好塩基球,リンパ球などの免疫応答が治療効果に関連すると考えられています。

    OITは,「自然経過では早期に耐性獲得が期待できない症例に対して,事前の食物経口負荷試験(oral food challenge:OFC)で症状誘発閾値を確認した後に原因食物を医師の指導のもと経口摂取させ,脱感作とした上で究極的には耐性獲得をめざす治療法」と定義されています。

    OITの統一された方法は提唱されていませんが,概要としては①OIT開始前に症状が誘発される量(閾値)を確認するためOFCを実施する,②少量の原因食物摂取開始後,摂取する量を増加させ(増量期),③目標量まで到達したら同量の摂取を継続することで症状が出現しない状態(脱感作状態:desensitization)へ誘導する(維持期),④効果判定のOFCを実施する,で構成されます。

    治療をいったん終了し再び治療食物を摂取すると一部の症例では症状が誘発されることから,④は一定の摂取中止期間を設けた後に実施することが多いとされます。このOFCが陰性であれば,持続的無反応(=数週~数カ月の除去後にも症状が出現しない状態)と判断します。この後は断続的に摂取すれば状態を維持できることが期待されますが,運動や疲労などの要因が加わると原因食材の摂取により症状が誘発されることがあり,耐性獲得(=原因食物を持続的に摂取しなくても症状の誘発が完全にない状態)とは異なるため,十分な注意が必要です。

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