脳梗塞は大きく心原性脳塞栓症と非心原性脳梗塞に分類され,前者は抗凝固薬,後者は抗血小板薬を選択する。心原性脳塞栓症の原因の7割以上は非弁膜症性心房細動であり,再発予防には直接経口抗凝固薬(DOAC)を用いるが,腎機能不全などDOACが使えない場合は,ワルファリンを使用する。また機械弁装着例,リウマチ性弁膜症例においてもワルファリンを用いる。非心原性脳梗塞は,脳へ灌流する主幹動脈に狭窄を有するアテローム血栓性脳梗塞,脳細動脈の血栓性閉塞に伴うラクナ梗塞,原因不明,その他の原因に大別されるが,抗血小板薬を選択する。
脳梗塞の診断は,片麻痺,言語障害などの神経症状出現と脳MRIまたはCT検査による新規梗塞病変を検出することで行われる。特に,MRI拡散強調画像は新規虚血病変の検出に鋭敏なので,現在の脳梗塞診断のgold standardになっている。以前は神経症状が24時間以内に消失すれば一過性脳虚血発作と診断されていたが,現在は神経症状が消失してもMRI拡散強調画像で病変が確認されれば,脳梗塞と診断して治療を開始する。
脳梗塞急性期では血栓溶解療法,血栓回収療法の適応判定を迅速に行い,適応のある患者にはできるだけ早く治療を開始する。亜急性期から慢性期にかけては再発予防が主となるが,この際には上述した脳梗塞病型に応じた抗血栓療法と内科的リスク管理,生活指導が重要となる。内科的リスク管理では高血圧管理,脂質管理,糖尿病患者では血糖管理が重要となる。血圧管理では目標血圧値は130/80mmHg未満,アテローム硬化病変を有する脳梗塞でのLDLコレステロールの目標値は100mg/dL未満,糖尿病患者では低血糖発作を回避しつつHbA1cの目標値は7.0%未満である。
以下,本稿では抗血栓療法について述べる。
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