エボラ出血熱は,エボラウイルスによる熱性疾患である。1976年にザイール(現コンゴ民主共和国)とスーダンで最初の報告がされて以来,アフリカ中央部で局地的な流行が続いていたが,2014年に西アフリカ(リベリア,ギニア,シエラレオネ)で空前の大規模流行があり,2万8000人を超える感染者と1万1000人以上の死亡者が報告された。エボラウイルス属はフィロウイルス科に分類され,ザイール,スーダン,ブンディブジョ,タイフォレスト,レストン,ボンバリの6亜属が知られている。致死率は最も高いザイール(60~90%)からヒトへの病原性がほとんどないレストンまで,ウイルスごとに大きく異なる。自然界ではコウモリがエボラウイルスを保有しており,そこからヒトやヒト以外の霊長類などに感染する。また,感染者の血液,吐物,排泄物,分泌液を介して容易にヒト-ヒト感染する。
感染対策として,流行地域ではコウモリ,サルなどとの接触や,それらの肉を摂食することを避ける。医療現場で患者をケアする場合は,接触予防策をとることが必須であるが,その強い感染力と致死率から,飛沫,空気予防策を含む厳密な感染対策が推奨されている。
潜伏期間は2~21日(平均約1週間)で,発症は突発的である。症状は発熱(ほぼ必発),疼痛(頭痛,筋肉痛,胸痛,腹痛など),無力症などが多い。出血症状は報告にもよるが,主症状ではないことも多いため,近年は「エボラ出血熱」ではなく「エボラウイルス病」と標記されることが多い。2~3日で急速に悪化し,死亡例では約1週間程度で死に至ることが多い。日本人の感染者はこれまでに報告がなく,わが国にとってはきわめて稀な疾患と言えるが,潜伏期間内に流行地域への渡航歴があり,患者や動物との濃厚接触歴があれば疑う根拠となる。ただし,マラリア,腸チフス,髄膜炎菌性髄膜炎などの感染症と,臨床症状のみからは鑑別困難であることに注意を要する。
確定診断のためには,血液,咽頭拭い液,尿を検体として,①分離・同定による病原体の検出,②ELISA法による病原体の抗原の検出,③PCR法による病原体の遺伝子の検出を行う方法と,④血清中から蛍光抗体法またはELISA法によるIgM抗体もしくはIgG抗体を検出する方法とがある(感染症法による)。
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