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鼻骨骨折[私の治療]

No.5108 (2022年03月19日発行) P.47

西田直哉 (愛媛大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講師)

登録日: 2022-03-18

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  • 鼻骨は顔面の中央部で前方に突出しており,顔面外傷の際には打撃を受けやすく,そのため鼻骨骨折は顔面骨骨折のうち最も頻度が高い。変形は,前方からの外力では鼻骨が後方にめり込む鞍鼻型,側方からの外力では反対側に偏位する斜鼻型となる。新鮮例に対しては徒手整復(非観血的整復)を受傷後2週間以内に行う。

    ▶診断のポイント

    【問診】

    受傷日時,原因,外力の加わった方向,自覚的な外鼻変形の有無,鼻閉・嗅覚障害の有無を確認する。他の顔面骨骨折を伴うことがあるため,開口障害・咬合異常(上下顎骨骨折),視器障害(眼窩骨折,視束管骨折)についても問診する。

    【視診】

    正面・側面から鼻根部の陥凹・変形の有無を確認する。受傷直後では変形の有無を確認しやすいが,数時間経過すると軟部組織の腫脹により評価が難しくなる。

    【触診】

    骨折片の可動性,骨折部の圧痛を確認する。

    【画像検査】

    単純X線でも診断は可能であるが,CTではより多くの情報が得られるため,CT検査が可能な施設では実施すべきである。CT画像では鼻骨骨折以外の顔面骨骨折や鼻中隔血腫の有無を確認する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    骨折により外鼻の形態異常や鼻閉,嗅覚障害などの鼻腔の機能障害をきたした場合に整復を行う。ただ,機能障害は鼻中隔骨折や篩板損傷などの合併がなければ,鼻粘膜の腫脹の消退とともに改善する。そのため,手術適応の多くは外鼻の形態異常による審美的な面で考慮されるため,患者自身の意思が重要となる。

    【治療上の一般的注意】

    整復時期は受傷後早期が望ましいが,軟部組織の腫脹が強い場合は整復後の評価が難しいため,受傷後5~7日目頃に腫脹が消退してから再評価した後,必要であれば整復を行う。

    鼻骨は顔面正中に位置しており,患者の容姿に大きく影響する。しかし,徒手整復術は緻密な整復ではないため多少の変形が残る可能性があり,インフォームドコンセントは十分に行う必要がある。後のトラブルを予防するためにも患者に受傷前の顔写真を持参してもらうと,整復前後の評価に有用である。

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