【メリットは外用コンプライアンスの向上。デメリットは基剤の分離・変質,効果の減弱,細菌の繁殖などが挙げられる】
外用薬の多剤併用では,外用コンプライアンスを考慮して,混合するケースが多く認められます。しかし,皮膚に使用するステロイドと保湿系の外用薬の混合は,問題になりやすい組み合わせになります。
ステロイド軟膏と水中油型の乳剤性基剤では,軟膏の油と水中油型の水が混合することで,肉眼的には変化はみられませんが,顕微鏡で確認すると乳化の破壊が認められます。外用薬の混合では基剤の分離や変質が最も多いのですが,それだけではなく,含量の減少も起こる可能性があります。また,基剤によっては空気の混入が問題になることがあり,特に水中油型の乳剤性基剤では混入率が高くなります。保湿を目的としたクリームではなおさらです。
なお,軟膏とクリームの混合で大きな問題となるのは,この“乳化の破壊”です。乳化の破壊は透過性に影響するため,効果にも影響します。ヒトの血管収縮試験においても,効果が減弱することが示されています。また,長期に処方される場合では,減弱がより進行することが考えられます。
さらに,混合により防腐剤の稀釈が起こり,細菌の繁殖が増加することも予想されます。冷蔵庫内の保管でも,増殖速度は遅くなるものの増殖しないわけではないので,長期処方は避けるべきであり,使用時に混合することが適切となります。
混合や稀釈する場合,混合可であっても基剤が分離するケースもあります。ジェネリック医薬品の使用増加に伴い,データが不足しているため不明なことも多くなっており,主薬は同じでも基剤や添加物の種類が異なることによって,安定性などに問題を起こすと考えられています。
外用薬の混合は広く行われていますが,基剤や剤形を理解し,選択することが求められます。また,医薬品名から基剤を判断することも困難な場合があるため,それらに注意して混合しなければなりません。混合せずに,重ね塗りすることが必要な場合もあります。
【参考】
▶ 大谷道輝, 他:Derma No.314-手元に1冊!皮膚科混合・併用薬使用ガイド. 大谷道輝, 編. 全日本病院出版会, 2021.
【回答者】
古田勝経 小林記念病院褥瘡ケアセンター長/ 国立長寿医療研究センター研究員