夜間,激痛で苦しむも安易に救急車を呼ぶことに躊躇した患者。結局,タクシーを利用して救急外来に受診しましたが,初診料とは別に「選定療養費」の支払いが生じたことに,どうしても納得がいかないとのこと。
①診療の前に,時間外に受診された場合は診療費と別に料金が発生する旨をお伝えし,受付にもその旨を掲示しておりますので,ご納得頂いたものと思っておりましたが……。
②選定療養費とは,適切な医療を提供するために,一部負担金とは別にお支払い頂く診療費です。本日は,救急車を利用せず,かつ紹介状をお持ちなさらずに受診したため,選定療養費として自己負担が生じてしまいました。お気持ちはわかりますが,現行の保険制度上決まっていることですので,ご納得頂くしかないと思います。
患者の中には,救急車をタクシー代わりに利用する人がいる一方で,事例の患者のように安易に救急車を利用することに躊躇する人もいます。救急車の利用可否によって選定療養費の支払いが生ずることに納得がいかないかも知れませんが,②のように,なぜ自己負担が発生するのかを説明し,保険制度で決められた運用であることを説明し納得して頂くしかないと思います。診療の前に特別料金がかかることを説明し,見やすい場所にその旨を掲示する必要はありますが,苦しむ中で来院した患者は冷静に話が聞ける状態ではないので,①のような説明では納得してもらえません。
新聞の投書欄に「救急車控えたのに負担増とは」というタイトルの投稿がされていましたので,搔い摘んで紹介します。
43歳の主婦が,夜間に激痛に見舞われ,救急外来を受診することにしました。救急車を呼んでよいものかどうか悩んだ末,結局タクシーで行ったところ,診察終了後に会計担当者から,初診料のほかに「選定療養費」を請求されたとのこと。救急車が足りない状況を鑑みてタクシーで来院したのに,会計担当者曰く「救急車での来院の場合は,症状に関係なく選定療養費は不要」とのことでした。タクシー代や薬代も含めると,母子家庭の患者にとっては手痛い出費となり,怒りが湧き上がったという内容でした(朝日新聞,2017年7月28日)。