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クリプトスポリジウム症[私の治療]

No.5109 (2022年03月26日発行) P.43

倉井華子 (静岡県立静岡がんセンター感染症内科部長)

登録日: 2022-03-26

最終更新日: 2022-03-23

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  • 原虫による感染症であり,下痢,腹痛,悪心・嘔吐など消化器症状を起こす。健常人は自然軽快するが,HIV感染症など免疫不全者では難治性となること,胆道系感染症など消化管以外の感染症を起こすことがある。塩素で不活化されないため,水源を介した大規模なアウトブレイクの報告もある。

    ▶診断のポイント

    渡航歴や河川での水泳や飲水がある場合の水様性下痢,免疫不全者の14日以上続く下痢では本疾患を疑う。検査は便のショ糖浮遊法でオーシストを確認する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    免疫不全の有無,急性下痢症ではすべての症例で脱水の評価を最初に行う。免疫不全患者や小児と高齢者は,脱水により死亡するリスクが高い。免疫不全の患者では時に10Lを超える激しい下痢を起こすこともある。

    脱水の重症度評価は血圧,脈拍数,尿量,皮膚の乾燥(腋窩で見るとよい),口腔粘膜の乾燥,capillary refilling timeなどで評価する。capillary refilling timeは,第一指の指先を圧迫し,白くなった部分が赤く戻る時間を計り,2秒以内が正常,3秒以上では中等度以上の脱水があると評価する。

    脱水の補正は,軽症であれば経口補水液(oral rehydration solution:ORS),嘔吐や意識障害などで水分摂取が困難または中等症以上であれば輸液を行う。

    免疫正常者では自然軽快することから,抗原虫薬は原則投与を必要としない。長期続く場合は,ニタゾキサニドが下痢症状の期間短縮に有効とされる。免疫不全者では免疫不全状態の改善が治療の鍵となる。HIV感染症であれば抗HIV治療薬によるCD4陽性細胞数の回復,免疫抑制薬使用例では免疫抑制薬の減量または中止を行う。抗原虫薬としてはニタゾキサニド,アジスロマイシン,パロモマイシンなども選択肢に挙がるが,いずれも効果に対してはエビデンスがない。

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