クラミジアとは,RNAとDNAを保有するが純培養系では増殖できず,生きた動物細胞内でのみ増殖可能な一群の偏性細胞寄生性細菌の俗名である。ヒトに肺炎を引き起こすのは肺炎クラミジアとクラミジア・シッタシ(オウム病)で,クラミジア・トラコマチスは新生児肺炎の原因となる。
肺炎クラミジアは上気道炎をきたすことが最も多く,気管支炎がこれにつぎ,市中肺炎の1%程度に関与する。オウム病の2012年以降の届け出数は年間10例未満である。
肺炎クラミジアはウイルス感染症と鑑別困難である。主症状は咳嗽で,発熱しても微熱にとどまることが多い。オウム病は呼吸器症状に加え,高熱や筋肉痛,関節痛,頭痛などが出現する。
治療に際し重要なことは,抗菌薬が細胞内に十分移行することである。ペニシリン系やセフェム系などのβ-ラクタム系薬は細胞内移行がきわめて不良であり,その標的とする細胞壁をクラミジア属は有さないため,抗クラミジア活性をまったく示さない。同様にアミノグリコシド系薬も細胞内移行が不良で,抗クラミジア活性を有さない。細胞内移行が良好かつ強いクラミジア増殖抑制を示す薬剤には,テトラサイクリン系薬,マクロライド系薬,ニューキノロン系薬(レスピラトリーキノロン)およびケトライド系薬などがある。各種薬剤の最小発育阻止濃度(MIC)は,クラミジア種間で差はみられず,現在までクラミジア・トラコマチスを除いて野生株の耐性化の報告はない。
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