円錐角膜は,角膜傍中央部が進行性に菲薄化して前方突出し,視機能低下をきたす疾患であり,日常臨床の現場において遭遇しやすい疾患のひとつである。実際に,角膜形状解析を用いた疫学調査1)によると,約375人に1人と推定されており,従来の報告の5~10倍とかなり高いことが報告されている。多くは両眼性であるが,必ずしも両眼の程度は同じではなく,片眼が正常のこともある。思春期から青年期にかけて発症し,長期的に進行を認めることが多く,疾患が進行するほど,重篤な視機能障害を引き起こし,日常生活の質が低下していく。したがって,患者の視機能維持の観点から,本疾患は早期発見および進行予防が重要となる。
初期の円錐角膜は,細隙灯顕微鏡検査だけでは診断が困難であり,見逃すことが少なくない。したがって,視力,屈折,細隙灯顕微鏡検査以外にも,角膜形状解析の使用が望ましい。特に日常診療の中で,ケラト値が46D以上,乱視が2D以上,若年者の斜乱視・倒乱視,角膜厚が500μm以下,視力が出にくい,視力や屈折が変動しやすいなどが疑われれば,角膜形状解析を考慮する。角膜形状解析装置を有さない施設では,専門施設などへ紹介をすべきであろう。
角膜形状解析では,角膜中央やや下方の急峻化(inferior steepening)や強弱主経線の曲線化(skewed meridian,lazy 8 figure)が認められる。従来のプラチドリング式角膜トポグラファーと比較して,角膜トモグラファーは,角膜前後面形状や角膜厚の分布も計測可能であることから,早期の形状変化をとらえやすい。最近では,ほとんどの角膜形状解析装置にスクリーニングテストが搭載されていることから,診断自体は比較的容易となっている。進行例では,角膜上皮下のヘモジデリン沈着(Fleischer ring),デスメ膜の皺(Vogt’s striae),上皮下混濁(apical scar)などが観察可能である。
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