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慢性腎臓病(CKD)に対するNEP阻害薬の意義は?

No.5112 (2022年04月16日発行) P.54

長洲 一 (川崎医科大学腎臓・高血圧内科学准教授)

向山政志 (熊本大学大学院生命科学研究部腎臓内科学講座教授)

登録日: 2022-04-14

最終更新日: 2022-04-12

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  • CKDに対する中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase:NEP,別名ネプリライシン)阻害薬の意義について,熊本大学・向山政志先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    長洲 一 川崎医科大学腎臓・高血圧内科学准教授


    【回答】

    【現在ARNIが高血圧,心不全で使用され,CKDでの有用性が示唆されている】

    NEPは,Na利尿ペプチド(ANP,BNP,CNP)の代謝・分解をつかさどる最も重要な酵素で,腎臓,血管内皮や心臓,小腸,脂肪組織など,全身に広く発現しています。

    Na利尿ペプチドは生体で最も強力な降圧・利尿ホルモンであるため,内因性のNa利尿ペプチドを増強する試みとして30年ほど前からこの酵素の阻害薬が開発され,治験が行われました。しかし,NEP阻害薬単独での治験では十分な降圧効果を示しませんでした。その理由としてNEPの基質に降圧ペプチドだけでなく,アンジオテンシンI,IIやエンドセリンなどの昇圧ペプチドも含まれる可能性が示唆されました。次に,NEPとアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害する化合物(バソペプチダーゼ阻害薬)が開発され,治験が行われました。2000年のIMPRESS試験ではomapatrilatの心不全に対する有効性が示されましたが,2004年のOCTAVE試験では実薬群で有意に血管浮腫が発症するとわかり,開発が中止となりました。この機序として,NEPとACEの基質にブラジキニンがあり,これら両者の阻害で有意にブラジキニンが増加する可能性が示されました。

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