好酸球性筋膜炎は,四肢に対側性の板状皮膚硬化(皮膚・皮下組織の腫脹・浸潤・肥厚)と関節可動域制限を急性あるいは亜急性にきたす原因不明の疾患である。皮膚硬化は四肢近位・体幹まで及びうるが,顔面や手指の硬化は通常みられない。特徴的な皮膚所見として,orange peel-like appearance(腫脹,皺の形成,毛孔開大による変化で約50%にみられる)とgroove sign(表在静脈に沿って皮膚が陥凹する所見で約50%にみられる)がある。20~60歳代に好発し,男女比は1.5:1とやや男性に多い。30~50%の患者で,発症前に過度の運動・労作あるいは打撲などの外傷のエピソードがあり,傷害された筋膜の非特異的炎症と組織から流出した抗原に対する自己免疫応答が,発症に関与していると考えられている。約30%に限局性強皮症を合併する。
臨床像,病理組織所見,血液検査所見,画像所見を総合して診断する。
臨床像については,非対称性や限局性などの非典型例が存在する点に注意が必要である。病理組織所見では,リンパ球や組織球の浸潤を伴う筋膜の肥厚が特徴である。好酸球浸潤は本症に特異的な所見だが局所的かつ一過性のこともあり,診断に必須ではない。血液検査所見では,好酸球増多(60~80%),高ガンマグロブリン血症(30~80%),高アルドラーゼ血症(60%)などが特徴である。好酸球増多は一過性で,急性期にのみみられることも多く診断に必須ではないが,治療後に低下し疾患活動性と相関するため,病勢や治療効果の評価に有用である。血清アルドラーゼ値は治療により減少し,再燃時に最も鋭敏に再上昇すると報告されており,多くの症例において疾患活動性の指標となる。画像所見では造影MRIにおけるT2強調画像での筋膜の高信号が特徴的である。
診断に際しては,全身性強皮症と限局性強皮症を除外する必要があるが,後者については約30%の頻度で合併することに留意しておく必要がある。
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