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特集:にきび治療─治療法と治療薬

No.5112 (2022年04月16日発行) P.24

黒川一郎 (明和病院皮膚科部長/にきびセンター長)

野村有子 (野村皮膚科医院院長)

登録日: 2022-04-15

最終更新日: 2022-04-13

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黒川一郎:1983年関西医科大学卒業。ベルリン自由大学留学。兵庫県立塚口病院皮膚科部長,三重大学皮膚科准教授等を経て,2011年より現職。兵庫医科大学臨床教育教授併任。

野村有子:慶應義塾大学医学部卒業。病院勤務等を経て,1998年に開業。2003年に移転し,皮膚科のカフェやアレルギー対応モデルルームを併設。スキンケアや生活指導にも力を入れる。

1 にきび(尋常性痤瘡)とは
・にきび(尋常性痤瘡)とは,主に思春期に生じる毛包・皮脂腺の慢性炎症性疾患である。顔面,前胸部,上背部に好発する。
・にきびの原因は,①皮脂分泌の亢進,②男性ホルモンなどの内分泌的因子,③毛包漏斗部の角化異常,④にきび桿菌の増殖と炎症の誘導,が大きく関係すると考えられてきた。
・近年,自然免疫を中心とするサイトカインなどの免疫学的側面,毛包皮脂腺導管部上皮の分化異常(コメドスイッチ,comedone switch),微生物のマイクロバイオームの不均衡などの新しい側面から,にきびの病態が解明され,新規治療が期待されている。

2 にきびの診断
・にきび関連疾患を最初に鑑別することが重要である。にきび関連疾患には,集簇性痤瘡,化膿性汗腺炎,酒皶,酒皶様皮膚炎,ステロイド痤瘡などがある。
・にきびの診断は,面皰の存在によって臨床的に行われる。にきびの初発疹は面皰であり,面皰の存在が,にきびの診断に不可欠である。
・にきびは目に見えない面皰(微小面皰:病理学的面皰)に始まり,目に見える面皰〔白色面皰(白にきび):閉鎖面皰,黒色面皰(黒にきび):開放面皰〕として認識され,その後,紅色丘疹(赤にきび),膿疱(黄色にきび)という炎症性皮疹へ進行する。さらに,炎症後丘疹,炎症後色素沈着,萎縮性瘢痕へ移行する。
・一部は面皰,丘疹より毛包壁が拡張し,囊腫,結節,皮下瘻孔を形成することもある。また,時に萎縮性瘢痕,肥厚性瘢痕というにきび痕が残ることもある。

3 にきびの治療
・この10年で日本におけるにきび治療は大きく様変わりした。
・にきびの治療には,大きくわけて薬物療法と施術がある。にきびの治療は薬物療法が中心となる。急性炎症期では,過酸化ベンゾイル(BPO)製剤の外用,抗菌薬の内服・外用が中心となる。維持期では,BPO製剤,アダパレンの外用が中心となる。
・にきび桿菌の抗菌薬耐性獲得をできるだけ避けるため,抗菌薬の内服・外用は急性炎症期にとどめ,BPO製剤を併用する。維持期では,抗菌薬は炎症が再燃した場合を除いて用いない。
・抗菌薬の内服・外用は交叉耐性の獲得を避けるためにも,同じ系統の薬剤の使用を避けることが重要と考える。抗菌薬の内服ができない場合は,漢方薬の内服による治療も選択肢になる。洗顔をはじめとするスキンケアも重要である。
・面皰圧出は有効な施術である。薬物療法以外にケミカルピーリング,イオン導入という自費診療も選択肢になる。
・いずれにしても,早期に積極的な治療を開始して炎症を抑えることが,瘢痕の予防につながる。
・痤瘡関連疾患である化膿性汗腺炎は,TNF-α抗体による治療が適応になった。TNF-α抗体による治療は,難治性痤瘡疾患にも有効である。現在,生物学的製剤による難治性痤瘡疾患の治療が注目されている。
・専門医に紹介する場合,にきびの中等症以上,痤瘡関連疾患が対象になると考えられる。

伝えたいこと…
初診時に,にきびとその他の痤瘡関連疾患との鑑別を行うことが重要である。にきびの場合は,非専門医でも内服薬や外用薬を中心とした早期の治療で,瘢痕の予防などを行うことができる。スキンケアなど継続した患者指導も効果的である。痤瘡関連疾患,中等症以上のにきび,痤瘡の合併症である萎縮性瘢痕,肥厚性瘢痕,ケロイド,炎症後色素沈着は,治療法が異なるため,専門医への紹介が必要である。

1 にきび(尋常性痤瘡)とは

(1)定義

にきび(尋常性痤瘡)とは,主に思春期に生じる毛包・皮脂腺の慢性炎症性疾患である。顔面,前胸部,上背部に好発する。にきびの原因は,①皮脂分泌の亢進,②男性ホルモンなどの内分泌的因子,③毛包漏斗部の角化異常,④にきび桿菌の増殖と炎症の誘導,が大きく関係すると考えられている1)

(2)現状

にきびは思春期までに多くの人が罹患するごくありふれた疾患である。アンケートによる疫学調査2)では,にきびの平均発症年齢は男性13.3歳,女性12.7歳で,生涯罹患率は95.8%以上と推定されている。しかし,医療機関への受診率は16.2%にすぎず,自分で何らかの対処をしている例も多い。

にきびへの対処として,7割以上の人が洗顔・保湿など肌の手入れを心がけており,3割以上が薬や化粧品を購入して使っていた。さらに2割以上が自分でつぶしていた。「つぶしたほうが早く治る」「年齢の数だけすすぐほうがきれいになる」「とにかく保湿が大切」など,誤った情報に踊らされている例もある。

にきびに対する正しい治療を早めに開始することで,できるだけにきび痕を残さずに治すことが可能となる。にきびを早く治すことで,にきびによる精神的な苦痛から解放されることにつながり,患者QOLは格段に上がると考えられる。

(3)臨床症状

①面皰

にきびの皮疹の過程を図1に示した。にきびは,実際には目に見えない微小面皰より既に始まっている1)。にきびの患者の皮疹のない部位を皮膚生検すると,約30%に病理学的面皰が存在していたと報告されている3)。その後,肉眼で見える面皰として認識される。


面皰には,白色面皰(白にきび:閉鎖面皰),黒色面皰(黒にきび:開放面皰)の2種類がある(図2)。黒色面皰の色はメラニンによるものと考えられている。面皰は紅色丘疹(赤にきび),膿疱(黄色にきび)という炎症性皮疹へ進行する(図3)。その後,炎症後丘疹を経て,炎症後色素沈着,瘢痕へと移行する。また面皰,紅色丘疹の一部は,毛包壁が拡張すると囊腫,結節へ移行し,その後,肥厚性瘢痕,ケロイドを形成する。また,時に皮下腫瘍,皮下瘻孔を形成することもある。囊腫壁が破壊され,真皮に角化物,細菌などが漏出すると異物肉芽腫が形成される。

にきびの診断で重要なのは,初発疹としての面皰の存在である。

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