【罹患後でも免疫を持続する効果があるため,ワクチン接種のメリットはあると考えられる。ただし,その持続期間は不明のため,追加接種の必要性や接種時期については明らかではない】
わが国では2016年3月より50歳以上の成人を対象に,水痘ワクチンを帯状疱疹の予防目的で使用できるようになりました。また,2020年1月から遺伝子組み換え型サブユニットワクチン(シングリックス®)の発売も開始されました。
帯状疱疹罹患後でも,水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus:VZV)特異的細胞性免疫が減衰することで,1~数%の患者では再度罹患すると考えられています1)。帯状疱疹の最も多い合併症は帯状疱疹後神経痛で,帯状疱疹患者の10~30%で罹患後に発症します。QOLに大きな影響を与えるため,帯状疱疹罹患後であっても50歳以上の水痘ワクチン未接種者に対して,帯状疱疹予防目的でワクチンを接種するメリットはあると考えられます。なお,米国予防接種諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices:ACIP)は,帯状疱疹罹患歴のある成人に対しても罹患歴のない方と同様にシングリックス®接種を推奨しています。しかし,罹患後から接種までの間隔についての明確なエビデンスはなく,帯状疱疹罹患歴のある成人への接種についての安全性や免疫原性については,現在研究中とされています2)。
水痘ワクチンと同等の弱毒生帯状疱疹ワクチン(ゾスタバックス®)を用いた米国での長期追跡調査では,接種後4~5年で有効性は低下するとされています3)。一方,シングリックス®は,初回接種後9年間は接種前より高い抗体価を維持できることが報告されています4)。しかしながら,現時点でわが国において,これらのワクチンにより誘導されたVZV特異的細胞性免疫がいつまで持続するかはわかっていません。よって,正確な追加接種の必要性や接種時期については明らかではありませんが,先の米国での成績を参照しながら,2回目接種の是非や時期を検討していく必要があります。
【文献】
1)Shiraki K, et al:Open Forum Infect Dis. 2017;4 (1):ofx007.
2)Dooling KL, et al:MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2018;67(3):103-8.
3)Baxter R, et al:Am J Epidemiol. 2018;187(1) :161-9.
4)Schwarz TF, et al:Hum Vaccin Immunother. 2018 ;14(6):1370-7.
【回答者】
服部文彦 刈谷豊田総合病院小児科医長
吉川哲史 藤田医科大学医学部医学科小児科学教授