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ニューモシスチス肺炎,サイトメガロウイルス肺炎[私の治療]

No.5115 (2022年05月07日発行) P.44

進藤有一郎 (名古屋大学医学部附属病院呼吸器内科)

登録日: 2022-05-05

最終更新日: 2022-05-02

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  • Ⅰ.ニューモシスチス肺炎

    ニューモシスチス肺炎(pneumocystis pneumonia:PCP)はPneumocystis jiroveciiに起因する肺炎である。免疫不全患者に発症する代表的な日和見感染症である。PCPの発症リスクとしては,CD4 Tリンパ球減少を伴うHIV感染が最も大きく,その他のリスク因子として,造血細胞および固形臓器移植,悪性疾患(特に血液系悪性疾患),ステロイド・化学療法・その他の免疫抑制薬の投与が挙げられる。
    PCPはHIV患者とnon-HIV患者にわけて考える。近年,免疫抑制薬の投与を受けている患者の増加に伴い,non-HIV PCPが増えている。HIV-PCPはnon-HIV-PCPに比べて,菌量が多いが緩徐な経過で予後は良好である(死亡割合:HIV-PCP 10~20%,non-HIV-PCP 35~50%)1)

    ▶診断のポイント

    【臨床経過】

    HIV-PCPの場合,AIDSの初発症状となることがあり,緩徐な経過(2カ月程度)であることが多い。一方,non-HIV-PCPの場合は,急速に発症(2週間程度)するケースが目立つ。

    【胸部X線,CT検査所見】

    両側びまん性のすりガラス陰影が特徴的である。non-HIV-PCPでは病変部と非病変部の境界が明瞭で,モザイクパターンを呈することがある。

    【血液検査所見】

    リンパ球分画の低下(≦10%),高γグロブリン血症,高LD血症,KL-6高値,β-D-グルカン上昇(他の真菌症でも上昇することに留意)を認めることが多い。

    【確定診断検査】

    P. jiroveciiの培養法は確立されていないため,気管支肺胞洗浄液や肺組織でP. jiroveciiを鏡検法で検出する。栄養体の検出にはライト・ギムザ染色,Diff-Quik染色TM,シストの検出にはグロコット染色,トルイジンブルーO染色が用いられる。PCR検査は,定着(colonization)を見ている可能性があることに留意して解釈する。検査検体は下気道由来のものが望ましいが,困難な場合は誘発喀痰で代用する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    抗微生物治療として,ST合剤を第一選択として使用する。第二選択薬としてアトバコン,ペンタミジンがある。ステロイドは,PaO2<70TorrまたはA-aDO2>35と,呼吸不全あるいは準呼吸不全を呈する場合に使用を検討する。治療期間は,HIV-PCPで3週間,non-HIV-PCPで2~3週間が目安である。

    長期間ステロイドなどの免疫抑制治療をする場合には,ST合剤などによる予防も重要である。

    ▶治療の実際

    【抗微生物薬】

    一手目 :バクタ配合錠(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)1回3~4錠(トリメトプリム換算:15~20mg/kg)1日3回(毎食後)

    一手目 :〈第二選択薬として〉サムチレール内用懸濁液(アトバコン)1回750mg 1日2回(朝・夕食後)

    一手目 :〈第二選択薬として〉ベナンバックス注(ペンタミジンイセチオン酸塩)1回3~4mg/kg 1日1回(点滴静注)

    【ステロイド】

    PaO2<70TorrまたはA-aDO2>35を満たす場合。

    一手目 :プレドニン5mg錠(プレドニゾロン)1~5日目:1回8錠 1日2回(朝・昼食後),6~10日目:1回4錠 1日1回(朝食後),11~21日目:1回2錠 1日1回(朝食後)

    呼吸不全が強い重症例では,ステロイドパルス療法を考慮してもよい。

    【PCP発症予防のための抗微生物薬使用】

    一手目 :バクタ配合錠(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)1回1錠1日1回(朝食後)

    一手目 :〈第二選択薬として〉サムチレール内用懸濁液(アトバコン)1回1500mg 1日2回(朝・夕食後)

    【文献】

    1) Sepkowitz KA:Clin Infect Dis. 2002;34(8):1098-107.

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