社会保障審議会介護保険部会は5月16日、次期介護保険制度改正に関する本格的な議論に入った。この中で厚生労働省は当面の論点として、▶地域包括ケアシステムの更なる深化・推進、▶介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進、▶給付と負担、▶その他の課題―の4項目を提示し、概ね了承された。
今回の制度改正は、2024年度から始まる「第9期介護保険事業(支援)計画」への対応が主な内容。第9期計画は3年間の対象期間中に「地域包括ケアシステム」と「地域医療構想」の目標年である25年が含まれる上、その後40年までは生産年齢人口の急激な減少と85歳以上の高齢者人口の急激な増加が見込まれている。さらに計画の初年度の24年度は、介護報酬、診療報酬、障害福祉サービス報酬等のトリプル改定年にあたる。
こうした背景から部会では、介護ニーズの増大と労働力の制約への対応を両立させて制度の持続性を確保することや、地域包括ケアシステムと地域医療構想の整合を図って介護と医療の連携をより強化する観点からの議論が進められる見通しだ。
16日は、地域包括ケアシステムの更なる深化・推進をテーマに議論。厚労省はこの課題の論点として、▶在宅・施設を通じた介護サービスの基盤整備、住まいと生活の一体的な支援、▶医療と介護の連携強化、自立支援・重度化防止の取組の推進、▶認知症施策、家族を含めた相談支援体制、▶地域における介護予防や社会参加活動の充実、▶保険者機能の強化―の5項目を提示した。
議論で江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は介護保険事業計画と地域医療構想の一体的運用を提案、「一刻も早く地域医療介護構想とすべきだ。そうすることでそれぞれの計画がうまく噛み合い、より現実的なものになる」などと述べた。また井上隆委員(日本経済団体連合会常務理事)と吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、医療のオンライン資格確認等システムを参考に、介護分野においてもマイナポータルを介して介護情報の閲覧や共有が可能になるような仕組みづくりを検討するべきだとの認識を示した。