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特集:CKDにおける骨粗鬆症治療薬の使い方

No.5121 (2022年06月18日発行) P.18

稲葉雅章 (大野記念病院名誉院長,大阪市立大学名誉教授)

登録日: 2022-06-17

最終更新日: 2022-06-14

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1979年大阪市立大学卒業。2010年大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学・腎臓病態内科学教授,20年大阪市立大学名誉教授,大野記念病院名誉院長。日本内科学会総合専門医・認定医,日本内分泌学会内分泌代謝科専門医・指導医,日本リウマチ学会専門医・指導医,日本骨粗鬆症学会認定医。

1 慢性腎臓病(CKD)と骨粗鬆症との関係
慢性腎臓病(CKD)と糖尿病は骨折リスクを上昇させる代表的な生活習慣病である。CKDでも特に糸球体濾過量(GFR)<60mL/分/1.73m2のstage 3以上の患者では,副甲状腺機能亢進症が発症・進展し,これにより皮質骨多孔症が惹起され,大腿骨近位部骨折のリスクが上昇する。また,尿毒症や糖尿病に伴うサルコペニアや低血糖は,骨密度(BMD)低下に加え,転倒確率の上昇なども介して骨折リスクを増大させる。女性ホルモンは副甲状腺ホルモン(PTH)の骨吸収促進作用を抑制するため,CKD進行に伴う骨折リスクの増大は,閉経後女性>閉経前女性>男性の順となる。特に原発性骨粗鬆症が好発する高齢CKD女性では,皮質骨多孔症に有効な骨吸収抑制薬による積極的な介入が必要となる。

2 自施設内でのオンライン診療の適応を確認する
2017年に発表されたKDIGOのCKD-MBDガイドラインで,二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)測定によるBMDが骨折リスクを予測することが示された。大腿骨頸部やtotal hip BMDは1標準偏差(standard deviation:SD)低下するごとに全骨折ハザード比(HR)は,非CKD群で2.14〔95%信頼区間(CI):1.80〜2.55〕,CKD群で2.69(95%CI:1.96〜3.69)であった。大腿骨骨折に限定すると,大腿骨頸部のBMD 1SD低下によるHRは,非CKD群で3.08(95%CI:2.29〜4.14),CKD群で5.82(95%CI:3.27〜10.35)であり,CKD患者でのBMD低下は非CKD群に比べて骨折リスクへの影響が大きいと考えられる。さらに,年間BMD減少率の上昇は,骨折リスク増大を予測することも示されている。これらから,BMD上昇が骨折防止の明確な目標となった。
閉経後骨粗鬆症に対する治療薬物の評価を行った大規模RCTのpost hoc解析で,これら薬剤による推算糸球体濾過量(eGFR)中等度低下患者へのBMD上昇や骨折頻度抑制の効果も,eGFR軽度低下患者や正常患者と同等であった。なお,CKD患者に投与可能なビスホスホネート薬に加えて,デノスマブやロモソズマブでもBMD増加効果がみられている。これら2つの薬剤では投与後の低カルシウム血症に注意をする,またロモソズマブでは心血管系疾患(CVD)リスクを考慮する必要があるが,臨床使用は十分可能である。

3 CKD患者の骨密度(BMD)以外の骨折リスク
CKDではサルコペニアが好発し,uremic sarcopeniaとして知られている。また,サルコペニアによる骨に対する機械的刺激の減少により,皮質骨多孔性から皮質骨幅減少が起こる。実際,筆者らは保存期CKDのサルコペニア患者で骨折有病率の上昇を認めている。
さらに,サルコペニアによる転倒リスクの上昇に加えて,糖尿病合併による低血糖,高血圧症に対する降圧薬の使用,CKDでの夜間排尿回数の増加による夜間歩行機会の増加や不眠症好発に対する睡眠導入薬により,CKD患者では転倒リスクが上昇すると想定され,これらにより骨折リスクも上昇すると考えられる。

4 CKDでの骨粗鬆症治療薬の選択
CKDでは,PTH過剰症やサルコペニアはともに皮質骨多孔性や皮質骨幅減少化を通じて大腿骨近位部骨折のリスクとなる。したがって,薬剤の選択としては同部位の骨折防止が目的となり,皮質骨への薬効が証明された薬剤が選択される。ビスホスホネート薬のうち,腎機能低下を示す患者でも投与可能なアレンドロネート,イバンドロネート,ミノドロネートなど,またデノスマブやロモソズマブなどが選択される。PTH注射薬も適応となるが血圧低下が報告されているため,投薬は慎重に行う必要がある。ビスホスホネート薬以外は効果の発現が非常に早いため,デノスマブやロモソズマブでは低カルシウム血症,PTH注射薬では高カルシウム血症に注意を要する。

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