医療機関では,日々,様々な物が患者に貸し出されています。しかし,貸し出せる物の数にも限りがあり,貸し出した患者の利用状況を見て,他の患者に貸すこともあります。
①車椅子はもともと病院の所有物であり,数にも限りがあります。申し訳ございませんが,利用状況を判断した上で,こちらで決定させていただきます。
②現在,すべての車椅子を貸し出しております。どうしても今日入院した患者に必要だったもので,事前にお断りしなかったことについてはお詫びします。改めまして,他の方にお貸ししてもよろしいでしょうか。
会話の通り,もともとは病院の所有物でありますから,どのように使用するかは病院側が自由に判断してもよいかと思えます。しかし,所有権は病院にあっても貸与した場合には患者に占有権があり,断りもなく勝手に使用することはできません。①のように所有権を主張するような対応をした場合,患者の心情を益々エキサイトさせてしまいます。②のようにまずお詫びして,必要だった理由をきちんと説明して患者の承諾を得ましょう。
外来・入院を問わず,医療機関では患者に対し,備品を貸し出すことが多々あります。たとえば,体温計や食器などで,事例の車椅子もそうです。特に入院の最初の頃は移動に車椅子を頻繁に使用しても,回復して徐々に車椅子を使用することも少なくなってきます。しかし,特に期限を定めずに貸与している場合が多いかと思われます。希望する患者全員に貸し出せるほどの車椅子を所有している医療機関は少なく,症状から判断して順次必要とする患者に貸与しているのが実情です。
当然,次の患者に貸与するときは,事前に貸与している患者に断って対応しますが,たまたまベッドに患者が不在で,借用したい旨説明ができずに次の患者に貸与してしまうケースもあります。患者としては占有権を主張しますが,医療機関も所有物であることを主張して,双方衝突する事態も生じます。