収縮障害心不全(HFrEF)に対する運動療法は、Belardinelli Rらによる1999年の報告 [Circulation. 1999;99:1173]以来、転帰改善作用への期待が高まったものの、2009年に報告された初の大規模長期間ランダム化試験“HF-ACTION”では、そのような有用性を確認できなかった[JAMA. 2009;301:1439]。ところが、Circulation誌7月12日号に掲載された本試験の後付解析[DOI:10.1161/CIRCULATIONAHA.122.059983]からは、「フレイル」を伴うHFrEFに限れば、運動療法が有用である可能性が示された。考察を含め紹介したい。
HF-ACTION試験の対象は、北米とフランスで登録された、症候性HFrEF 2331例である(年齢中央値:59歳、左室駆出率中央値:25%)。「運動療法」群では「通常治療」に加え、「3回/週×3カ月」の監視下有酸素運動後、「40分間/回×5回/週」の自宅有酸素運動(装置を提供)を継続するよう指示された。
しかし既に報告されている通り、30.1カ月(中央値)後、「運動療法」群における「総死亡・全入院」(1次評価項目)ハザード比(95%信頼区間)は0.93(0.84-1.02)となり、「通常療法」群と有意差は認められなかった。仮に有意差であったならば、3年間のNNT(治療必要者数)は「25」だっただけに、残念な結果だった。
さて今回報告されたのは、試験開始時のFrailty Indexが「>0.21」だった「フレイル」(1266例)と「非フレイル」(864例)に分けての後付解析である(非同意、途中脱落例は除外)。
その結果、まず「総死亡・全入院」HRは、「フレイル」例で「非フレイル」に比べ、BMIを含む諸因子補正後も、1.34(95%CI:1.16-1.53)の有意高値だった。
そしてここからが本研究のメインだが、このように高リスクだった「フレイル」例では、「運動療法」群で「通常療法」群に比べ「総死亡・全入院」リスクが有意に減少していた(HR:0.83、95%CI:0.72-0.95)。ただし内訳を見ると有意減少は「全入院」だけだった(同:0.84、0.72-0.99)。
なお「非フレイル」例では、「運動療法」による「総死亡・全入院」減少は認められなかった(同:1.04、0.87-1.25)。
原著者らはこの「運動療法」によるフレイル例「全入院」減少は、心血管系(CV)改善作用とは無関係と考察している。フレイル例においても「運動療法」群で「心不全入院」や「CV死亡・CV入院」リスクは減少していなかったためである。その代わりに機序の1つとして、「骨格筋や末梢微小循環における異常」是正の可能性を挙げていた。
また本検討では有用性が観察されなかった「非フレイル」例に対する運動療法も、より長期に観察すれば、フレイル抑制を介した転帰改善の可能性は否定できないと、原著者らは釘を刺している。
なお、HF-ACTION試験ではこれ以前にも、運動療法が有用なサブグループとして、「女性」[JACC Heart Fail. 2014;2:180]が報告されている。
本試験は米国国立心肺血液研究所の資金提供を受けて実施された。