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周期性四肢麻痺[私の治療]

No.5126 (2022年07月23日発行) P.46

久保田智哉 (大阪大学大学院医学系研究科保健学科生体病態情報科学講座臨床神経生理学准教授)

髙橋正紀 (大阪大学大学院医学系研究科保健学科生体病態情報科学講座臨床神経生理学教授)

登録日: 2022-07-23

最終更新日: 2022-07-20

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  • 発作性の四肢弛緩性麻痺を呈する疾患で,一次性(遺伝性)と内分泌・腎疾患などに随伴する二次性とがある。発作時の血清カリウム(K)値により,低カリウム性(hypokalemic periodic paralysis:HypoPP)と高カリウム性(hyperkalemic periodic paralysis:HyperPP)とに分類され,原因遺伝子が異なる。また,心電図異常(不整脈)や先天性小奇形を合併するAndersen-Tawil症候群がある。二次性では,甲状腺機能亢進症に随伴する甲状腺中毒性周期性四肢麻痺(thyrotoxic periodic paralysis:TPP)が最多である。

    ▶診断のポイント

    発作の特徴,随伴症状,臨床神経生理検査を参考に鑑別することが重要である。臨床的には,麻痺発作極期での血清K値により病型分類されるが,実際には,発作極期での血液検査施行は困難であり,単回の血清K値のみを根拠にした診断は避ける。HypoPPでも発作経過中に正・高カリウム血症を示すことがあり,臨床症状を考慮して診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    周期性四肢麻痺の治療は,「発作急性期の治療」と「発作間欠期における予防治療」とに大別できる。

    【発作急性期における治療】

    血清K値と心電図をモニターしながら,不整脈の発生など生命予後に関わる血清K値の管理を含めたバイタルサインの安定が最重要である。HypoPPの低カリウム血症では,グルコン酸カリウムなどの非徐放性カリウム製剤を内服させる。内服できないときには,経静脈投与を行うが,筋力回復や血清K値上昇の兆しがみられれば,リバウンドの高カリウム血症を避けるため,すぐに投与を中止する。HyperPPの発作は短時間で軽快することが多いため,心電図をモニターし,高カリウム血症による不整脈などに注意しながら経過観察する。TPPの場合は,甲状腺機能亢進症の治療を行う。

    【麻痺発作予防のための薬剤治療と生活指導】

    各病型に沿って誘因を避けることが重要である。

    TPPの予防には,抗甲状腺薬投与による甲状腺機能の正常化を図る。

    HypoPPの予防には,高炭水化物食や糖分・ナトリウムを多く含むジュース類を避け,Kを多く含む果物などを摂ることを勧める。アルコール多飲や激しい運動を避ける。アセタゾラミド(ダイアモックス®)が予防薬として使われることもあるが,有効とされるのは約50%で,症例によっては無効(30%)あるいは増悪(20%)させることがある。徐放性カリウム製剤や抗アルドステロン薬(アルダクトン®A)も時に有効である。

    HyperPPの予防には,寒冷を避け保温し,空腹にならないように高炭水化物食を頻回に摂取する。Kを多く含む果物やジュースは避ける。サイアザイド系利尿薬などは,少量でも予防に有効なことが多い。ダイアモックス®も予防薬として用いられる。ミオトニーが強い場合には,メキシレチン塩酸塩(メキシチール®)の服用を考慮する。

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