発作性の四肢弛緩性麻痺を呈する疾患で,一次性(遺伝性)と内分泌・腎疾患などに随伴する二次性とがある。発作時の血清カリウム(K)値により,低カリウム性(hypokalemic periodic paralysis:HypoPP)と高カリウム性(hyperkalemic periodic paralysis:HyperPP)とに分類され,原因遺伝子が異なる。また,心電図異常(不整脈)や先天性小奇形を合併するAndersen-Tawil症候群がある。二次性では,甲状腺機能亢進症に随伴する甲状腺中毒性周期性四肢麻痺(thyrotoxic periodic paralysis:TPP)が最多である。
発作の特徴,随伴症状,臨床神経生理検査を参考に鑑別することが重要である。臨床的には,麻痺発作極期での血清K値により病型分類されるが,実際には,発作極期での血液検査施行は困難であり,単回の血清K値のみを根拠にした診断は避ける。HypoPPでも発作経過中に正・高カリウム血症を示すことがあり,臨床症状を考慮して診断する。
周期性四肢麻痺の治療は,「発作急性期の治療」と「発作間欠期における予防治療」とに大別できる。
血清K値と心電図をモニターしながら,不整脈の発生など生命予後に関わる血清K値の管理を含めたバイタルサインの安定が最重要である。HypoPPの低カリウム血症では,グルコン酸カリウムなどの非徐放性カリウム製剤を内服させる。内服できないときには,経静脈投与を行うが,筋力回復や血清K値上昇の兆しがみられれば,リバウンドの高カリウム血症を避けるため,すぐに投与を中止する。HyperPPの発作は短時間で軽快することが多いため,心電図をモニターし,高カリウム血症による不整脈などに注意しながら経過観察する。TPPの場合は,甲状腺機能亢進症の治療を行う。
各病型に沿って誘因を避けることが重要である。
TPPの予防には,抗甲状腺薬投与による甲状腺機能の正常化を図る。
HypoPPの予防には,高炭水化物食や糖分・ナトリウムを多く含むジュース類を避け,Kを多く含む果物などを摂ることを勧める。アルコール多飲や激しい運動を避ける。アセタゾラミド(ダイアモックス®)が予防薬として使われることもあるが,有効とされるのは約50%で,症例によっては無効(30%)あるいは増悪(20%)させることがある。徐放性カリウム製剤や抗アルドステロン薬(アルダクトン®A)も時に有効である。
HyperPPの予防には,寒冷を避け保温し,空腹にならないように高炭水化物食を頻回に摂取する。Kを多く含む果物やジュースは避ける。サイアザイド系利尿薬などは,少量でも予防に有効なことが多い。ダイアモックス®も予防薬として用いられる。ミオトニーが強い場合には,メキシレチン塩酸塩(メキシチール®)の服用を考慮する。
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