感染性眼内炎には内因性眼内炎と外因性眼内炎がある。
内因性の眼内炎は眼球外に病巣があり,血行転移によって眼内に播種した眼内炎である。主に血流の豊富な網脈絡膜の播種から進展するため,両眼性であることも多い。内因性眼内炎を疑った場合は全身検索を行い,原因病巣も並行して治療しないと,既に敗血症になっているか,今後敗血症に進行するため,全身状態は不良であると考えたほうがよい。消化器系臓器の膿瘍からの転移が多く,起因菌は嫌気性桿菌が多い。
外因性眼内炎は穿孔性眼外傷や白内障手術などの眼内手術が起因となっている。通常は片眼性で,術創(多くは前眼部)から後眼部に向かって進展する。硝子体手術の対象になる多くは白内障術後の眼内炎や緑内障の濾過胞からの眼内炎である。硝子体手術後にも眼内炎が発症するが,手術による外因性眼内炎は白内障手術後の頻度が高い。近年,加齢黄斑変性症に対する抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬などの硝子体内注射が増加している。こういった薬剤の硝子体内注射でも眼内炎は起こり,手技的な特徴から網膜血管炎や硝子体中の炎症が先発し,後眼部から波及する眼内炎が増加している。
眼痛に伴う霧視が出現する。眼内炎の診断は結膜充血,毛様充血,前房内炎症,前房蓄膿,前房内フィブリン析出,角膜後面沈着物,眼痛などの臨床所見で判断する。眼痛が出現するのは約6割であり,眼痛が出現しない症例も多く存在する。前房内セルは大きめで,白色の大きめの角膜後面沈着物がみられる。後眼部から進行する場合は網膜出血や網膜浮腫,硝子体混濁が生じる。確定診断としては前房水採取か硝子体タップによるPCR検査か培養検査が不可欠である。
眼内炎の発症原因は,術後1〜2日目では緑膿菌,セラチア,腸球菌が多く,術後4〜7日目では表皮ブドウ球菌,黄色ブドウ球菌やコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)などのグラム陽性球菌からの発症が多い1)。一方,1カ月以上経過してから発症する遅発性眼内炎はPropionibacterium acnesなどの弱毒菌によるものが多い。
炎症が軽度で前眼部に炎症が限局していれば,抗菌薬の頻回点眼〔ニューキノロン系のモキシフロキサシン0.5%点眼液(モキシフロキサシン塩酸塩),アミノグリコシド系のハベカシン®0.5%(アルベカシン硫酸塩)(自家調剤)を3時間ごと〕や結膜下注射で沈静化する場合も多い。しかし,少しでも感染性の眼内炎を疑い,後眼部に播種していると疑えば,まず塩酸バンコマイシン注(バンコマイシン塩酸塩)1回1.0mg/0.1mLとセフタジジム注(セフタジジム水和物)1回2.0mg/0.1mLの硝子体内注射を考慮する。超音波検査で硝子体混濁が前方から後方に播種しそうな場合,早期に硝子体手術に踏み切る。
残り1,280文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する