わが国の統合失調症研究・治療をリードしてきた精神病理学者で神戸大名誉教授の中井久夫氏が8日、肺炎のため死去した。88歳だった。
中井氏は奈良県出身。京大法学部から同大医学部に転部し1959年に卒業。東大講師、名古屋市立大助教授などを経て、80年神戸大精神神経科教授。2004年兵庫県こころのケアセンター長。
神戸大教授時代の1995年1月に阪神・淡路大震災を経験、精神神経科医局の陣頭指揮を執り被災者の心のケアに尽力した。この時の体験をまとめた『1995年1月・神戸─「阪神大震災」下の精神科医たち』(みすず書房)が話題となり、被災者のPTSD(心的外傷後ストレス障害)や精神科を中心とする救急医療体制の議論に大きな影響を与えた。
『精神科治療の覚書』(日本評論社)、『分裂病と人類』(東京大学出版会)、『治療文化論』(岩波書店)など精神医学関連の著書のほか、訳書やエッセイも多数執筆し、『家族の深淵』(みすず書房)で毎日出版文化賞受賞。2013年文化功労者。
日本医事新報誌上でも、震災への対応や市場原理主義に揺れる医療界について意見・提言を発信してきた。
名古屋市立大助教授時代:軽症うつ病の外来第一日(一週一話)
神戸大教授時代①:専門家に聞く─それぞれの視点からみた大震災〈精神医療〉(特集「大規模災害と医療─阪神・淡路大震災の記録」)
神戸大教授時代②:中井久夫氏 神戸大精神神経科教授(人)
兵庫県こころのケアセンター長時代:このまま進んでよいのか?(プラタナス)