新型コロナ感染で自宅療養中の岸田文雄首相は8月24日、オンラインで記者会見を行い、医療機関や保健所に対するさらなる負担軽減策として、都道府県の判断で新型コロナ感染症の発生届を「重症化リスクのある者」に限定することを可能にすると発表した。緊急避難措置として都道府県レベルでの全数届出(全数把握)の見直しを可能にするもので、引き続き全国一律の全数届出見直しの検討も進める。
岸田首相は「発熱外来や保健所業務が相当に切迫した地域では、自治体の判断で緊急避難的に全数届出を見直すことができるようにした」としながら、発生届を重症化リスクのある者に限定した場合でも、届出対象外の軽症者等も含めて「(日ごとの)陽性者数は把握することを原則とする」と述べた。
厚労省が25日付で全国に送付した事務連絡によると、都道府県の判断で緊急避難措置を実施した場合、当該都道府県内での医師の届出の対象は①65歳以上の者、②入院を要する者、③重症化リスクがあり、コロナ治療薬の投与または酸素投与が必要な者、④妊婦─に限定される。
一方で、「届出対象を限定することで感染動向の把握が困難になり、感染症対策の連続性が絶たれる」などの懸念があることを踏まえ、都道府県知事は緊急避難措置実施後も「日ごとの患者の総数」と「日ごとの患者の年代別の総数」を毎日公表することが求められる。
「全数把握」見直しの判断を都道府県に委ねた政府方針に対し自治体の間では戸惑いが広がっており、小池百合子東京都知事は8月26日の記者会見で、「当面、発生届の取り扱いについて現在の運用を続けていく」と明言。理由について「発生届は感染動向の把握に加えて、患者1人1人の健康状態を把握し必要な医療につなげる重要な機能がある」「重症者だけを見るのでは、軽症から突然亡くなる方を見逃してしまう」などと説明した。
【関連情報】
新型コロナウイルス感染症に係る発生届の限定(緊急避難措置)の概要及び必要な手続き等について(8月25日付厚生労働省事務連絡(26日改正)))