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心室頻拍[私の治療]

No.5132 (2022年09月03日発行) P.36

里見和浩 (東京医科大学循環器内科准教授・不整脈センターセンター長)

登録日: 2022-09-01

最終更新日: 2022-08-31

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  • 心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)は,心室を起源とする心拍数が100/分以上になるものを指す。心室起源を示唆する心電図所見として,QRS幅が広い(>120ms)。特発性と呼ばれ器質的心疾患を持たず予後良好なものから,突然死の原因となるものまで,臨床的特徴は幅広い。

    ▶診断のポイント

    発作時の心電図で診断される。非持続性(3連発以上30秒以内)と持続性,単形性(同じQRS波形が連続する)と多形性(QRSが1拍ごとに変化する)に分類される。変行伝導を伴う上室性頻拍との鑑別が必要になることがある。

    重症度や生命予後は器質的心疾患の有無,左室駆出率(LVEF),発作時の血行動態により判断される。陳旧性心筋梗塞,拡張型心筋症,肥大型心筋症,心サルコイドーシス,催不整脈性右室心筋症などが基礎疾患として挙げられる。

    予後は12誘導心電図のみで診断可能なこともあり,QRS波形が左脚ブロックかつ下方軸を示すVTは流出路起源であり,特発性の可能性が高く,生命予後は良好である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【持続性VT】
    〈急性期治療〉

    VT中に意識がない,脈が触れないなど血行動態が維持できない状況であれば,まず電気ショックによる速やかなVTの停止が必要である。周囲の協力を求め,AEDの準備を依頼する。血圧が維持され,意識がある場合には,12誘導心電図による診断,薬物治療を試みる。急性虚血,心不全,貧血,電解質異常などの修飾因子の是正も必要である。

    〈慢性期治療〉

    停止後にVT再発予防,予後評価を行う。心エコー,心臓MRI,冠動脈造影などで器質的心疾患の有無,心機能(LVEF)を評価する。器質的心疾患を伴うVTであれば植込み型除細動器(ICD)の適応となる。ICDは突然死を予防するが,対症療法であり,発作の予防はできない。薬物治療およびカテーテルアブレーションによるVT再発予防を検討する。

    器質的心疾患を認めず,心機能が維持されている場合には,薬物治療を導入し経過観察も可能である。

    【非持続性VT】

    突然死の一次予防の適応を検討する。LVEFの低下(LVEF<35%)があれば,ICDの予防的植込みの適応である。特発性で症状がなければ,経過観察可能である。

    【治療上の一般的な注意&禁忌】

    心機能低下例では,陰性変力作用のあるI群抗不整脈薬は禁忌である。また,低心機能例では腎機能低下を合併していることも多く,腎排泄の薬剤使用時にはモニタリング(心電図,薬物血中濃度)が必要である。クラスⅢ群薬(ニフェカラント塩酸塩,ソタロール塩酸塩)はQT延長に注意する。特にβ遮断薬併用による徐脈時に多形性心室頻拍(TdP)を発生しやすい。アミオダロン塩酸塩は心機能低下例,腎機能低下例でも使用できるが,心外副作用(甲状腺機能障害,間質性肺炎)のモニタリングを行う。

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