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多剤耐性緑膿菌感染症/薬剤耐性緑膿菌感染症[私の治療]

No.5132 (2022年09月03日発行) P.41

髙田 徹 (福岡大学病院感染制御部教授)

登録日: 2022-09-05

最終更新日: 2022-08-31

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  • 主として悪性腫瘍,慢性気道疾患,熱傷,糖尿病など基礎疾患を有する免疫不全患者に生じる日和見感染症で,人工呼吸器関連肺炎やカテーテル関連尿路感染症など医療関連感染症の原因となりやすい。治療にあたっては感染症専門医へのコンサルトが望ましい。

    ▶診断のポイント

    カルバペネム系,キノロン系,アミノグリコシド系の3系統の抗菌薬すべてに耐性を示す株による感染症は,「薬剤耐性緑膿菌感染症」として5類の定点把握疾患に指定されている。血液や髄液など無菌検体から分離される場合は感染症として治療対象になるが,呼吸器や尿の検体から分離される場合はGram染色や菌量のほか,臨床所見や他の検査所見も参考に,感染症例のみを治療対象とする。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    患者のリスク/重症度を勘案して,個々の事例ごとに腎機能に応じた最大投与量を用いて治療を行う。薬剤感受性検査結果の判明前は,抗菌薬使用歴,地域や施設のアンチバイオグラムも参考にする。重症例では異なるクラスの抗菌薬の2剤併用を考慮する。薬剤感受性検査で感性を示す抗菌薬がない場合には,BCプレートを用いた微量希釈チェッカーボード法により,抗菌薬の相乗作用についても検討する。

    βラクタム系薬に感性がある場合は,バックボーンとして使用される。また,時間依存性の抗菌薬であるβラクタム系薬(例:ピペラシリン・タゾバクタム)では,投与時間の3~5時間程度への延長も考慮される。

    オルドレブ(コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム)は単剤でも多くが感性を示すが,血漿濃度が不十分となりやすく肺移行性も不良な一方,腎機能障害の発現頻度が高く治療安全域が狭い。そのため重症例,特に肺炎例では単剤治療よりもβラクタム系薬等との2剤併用治療が,生命予後が良好とする報告もある1)

    βラクタム系薬は,耐性機序により有効な抗菌薬が異なる場合があり2),併せて検査することが望ましい。わが国に比較的多いIMP型メタロβラクタマーゼ(Ambler分類Class B)産生株による感染症例に対しては,モノバクタム系薬(アズトレオナム)とアミノグリコシド系薬(アミカシン)併用が選択肢となる。

    メタロβラクタマーゼ非産生株で,OprDポーリンの変異や,薬剤排出ポンプの過剰発現による耐性株の感染症例に対しては,セフトロザン/タゾバクタムがコリスチンやアミノグリコシドと比べ同等の効果と低い腎障害率を示し,高い忍容性が期待できる3)。一方,AmpC過剰産生株では,セフトロザン/タゾバクタムの効果が低下する可能性があり,新規βラクタマーゼ阻害薬配合剤であるイミペネム/シラスタチン/レレバクタム配合剤が理論的には効果が期待できる。セフトロザン/タゾバクタムとイミペネム/レレバクタムはメタロβラクタマーゼ産生株には無効なので,注意が必要である。

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