1 ワクチンの接種法
・ワクチンの接種法には,①皮下注射,②筋肉内注射(筋注),③皮内注射〔BCGなどの管針法(スタンプ法)〕,④経口接種(ロタウイルスワクチンなど),⑤経鼻投与,の5種類がある。
2 有害事象・副反応(副作用)とは
・有害事象とは,ワクチンを含むいろいろな薬剤を投与した後に生じる,健康上好ましくない出来事である。
・副反応とは,ワクチン投与後に本来の目的である免疫獲得以外に起きる健康上の問題で,ワクチンとの因果関係が証明されているものを言う。
3 ワクチンの副反応
・全身的な反応(発熱,疲労,倦怠感,頭痛,筋肉痛,悪寒,吐き気,血管迷走神経反射,アナフィラキシーショックなど)と接種部の局所反応〔痛み,腫脹,発赤,熱感,しびれ,関節可動域制限,神経麻痺,複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)など〕がある。
4 注射手技に伴う損傷を回避するには
・肩にワクチン接種を受ける被験者は,接種されるほうの腕を身体の横にだらりと垂らした状態で臨むことが望ましい。
・肩三角筋の注射部位は被接種者の体格に応じて肩峰から下方75~100mmの間で行うのが安全と考える。
・肩三角筋内へのワクチン接種に際して,肩峰から30mm以内への接種は,肩峰下滑液包に薬液が入り,ワクチン接種に関連した肩関節障害(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration:SIRVA)を生じる危険があるため絶対に避けるべきである。
・肩峰から50~60mmの部位(3横指下)への接種は,腋窩神経と後上腕回旋動脈を損傷する危険性がある。また,肩峰下滑液包が大きかったり,三角筋下滑液包が存在してSIRVAを起こす危険性がある。
・上腕1/2以下の部位への接種では,橈骨神経障害の危険性がある。上腕1/2以上の部位でも腕を骨盤や腰に当てる格好で肩を外転・内旋すると橈骨神経の損傷の危険性が高まる。極度に内旋した場合は,尺骨神経損傷もありうる。
本特集は、Webコンテンツ「ワクチン筋注後の神経麻痺とSIRVAの予防と治療」を再構成しました。本特集に掲載していないSIRVA・腋窩神経損傷・橈骨神経損傷の治療等については、Webコンテンツをご覧ください。