COVID-19には、血圧調節にもかかわる酵素“ACE2”が関係しているため、COVID-19ワクチンが血圧に及ぼす影響に、関心が寄せられるのは当然かもしれない。比較的少数例を観察した結果では「昇圧作用」が示唆されているようだが[Sanidas E, et al. 2021.]、実際のところはどうだろう。そのような疑問から、より多数となる2000名弱を観察した結果が、8月22日、Eur J Intern Med誌ウェブサイトで先行公開された[Simonini M, et al. 2022.]。査読を経ていない「レター」だが、参考までに紹介したい。
Simonini氏らが解析対象にしたのは、COVID-19ワクチンを接種したイタリアの内科系医療従事者だ。医療従事者に限定した主な理由は、健康に関するリテラシーが比較的そろっており、かつ、ワクチン接種時期がほぼ同時期となるからだという。 調査票に回答した1870名が解析対象となった。
1870名の69%が女性で、ワクチンは2回目までほぼ95%がファイザー製、3回目も75%がファイザー製だった。接種前、16%に高血圧診断歴があった。
さて、ワクチン接種後の血圧推移だが、「上昇」と回答したのは8%、「低下」が4%だった。この血圧変化は、初回接種よりも2回目以降で多かった。なお、血圧「上昇」と回答した153名中、その後「高血圧」と診断されたのは25.5%(39例)のみである。
次に血圧「上昇」と回答した140名の内訳を見ると、接種前「高血圧診断歴あり」は29.3%のみ、同様に「低下」例でも、高血圧診断歴があったのは18.8%だけだった。
そして血圧「上昇」、「低下」に伴う症状は「頭痛」が最多(39%)で、「倦怠感」(34%)と「めまい」(18%)が続いた。高血圧・降圧薬服用既往のない一般住民であれば、これらの症状と血圧変化の関連は想起しえないのではないか。
ワクチン接種後は、短・中期血圧変動にも注意してほしい。そのようにSimonini氏は結んでいる。