No.5134 (2022年09月17日発行) P.14
飯塚玄明 (千葉大学大学院医学薬学府/多摩ファミリークリニック)
長嶺由衣子 (東京医科歯科大学東京都地域医療政策学講座)
登録日: 2022-09-15
最終更新日: 2022-09-14
SUMMARY
患者,そして国民の健康に貢献するプライマリ・ケアでは,健康の社会的決定要因(social determinants of health:SDH)への対応が重要と言われる。ミクロ・メゾ・マクロの3つのレベルでSDHを理解すると,SDHを見出しやすくなる。
KEYWORD
アドボカシー
本来個人が持つ権利を,様々な理由で行使することが難しい状況にある人に代わり,その権利を代弁・擁護し,支援する機能をアドボカシー(advocacy)と呼ぶ。
PROFILE
2017年筑波大学医学群医学類卒。2019年聖母病院家庭医療・病院総合診療専門研修プログラムを開始。同年に博士課程に進学。研究テーマは「ソーシャルキャピタルと健康」。(飯塚,写真も)
POLICY・座右の銘
虫の目,鳥の目,魚の目
生まれた家庭や住む場所,教育や雇用形態,所得,人間関係,利用できる制度など,個人の健康に影響を与える要因を「健康の社会的決定要因」(SDH)と言う1)。人が生まれ,成長し,働き,生活し,老いる一連の流れの中で起きる事象で,主に人体の遺伝や免疫などの医学的な要因以外で,個人の力では抗いがたい要因のことを指す1)。
プライマリ・ケアは,国民のあらゆる健康上の問題,疾病に対し,総合的・継続的,そして全人的に対応する地域の保健医療福祉機能と言われる。
個人の健康の30〜55%はSDHによって規定されることが知られており2),プライマリ・ケアを訪れる患者の半数がSDHについての支援を求めていると言われている3)。したがって,必然的にSDHを理解し適切に対応できることがプライマリ・ケアの現場で重要と言える。