10年前より駆け足中に右下肢脱力を自覚し,7年前から歩行にも支障が出始めた。3年前からは手で右足を持ち上げて階段を昇るようになり,さらに左下腿にも全周性のしびれが出現した。6カ月前には右足部のしびれも加わり,転倒するようになった。複数の整形外科や脳神経内科で精査され,原因不明のため当科を紹介受診した。
右下肢の脱力は入浴や飲酒のほか,歩行距離に応じて悪化し,立位および坐位での休息で短時間に回復するが,痛みは出現しない。ただし,首の前屈で右下肢痛が誘発されるという。
既往歴,常用薬はない。喫煙は10本/日,機会飲酒。
神経学的診察で,右下肢優位の痙性歩行。両側の膝蓋腱・アキレス腱反射の亢進,右Babinski徴候,左下腿以遠の触温痛覚低下,およびRomberg徴候を認める。一般血液・生化学検査に異常なし。腰椎MRIを示す(図1)。