新型コロナ対策でマスク着用が常態化する中、仙台市の三好耳鼻咽喉科クリニック院長の三好彰氏らは、2020年12月に難聴児・者、今年2月には医療関係者を対象にした調査を実施した。マスク着用常態化によって難聴児・者はどのような困難に直面し、それをどう解消したらよいのか、三好氏に聞いた。
難聴児・者のほとんどは、聴覚だけではなく、相手の表情や口元の動きを見て情報を取得しています。コロナ対策でマスク着用が推奨される中、難聴児・者がいかに困惑しているか、その実態は知られていませんでした。そこで、当院では、2020年12月、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会などの団体を通じ、「新型コロナウイルス感染症予防対策マスクと難聴者の会話に関するアンケート」を実施し、難聴児・者135人から回答を得ました。
マスク着用による困りごととして最も多かったのは、「相手の発音が不明瞭」「会話時に相手の口元が見えないために会話内容の把握が不十分になること」(複数回答で、それぞれ66.7%)でした。
また、補聴器や人工内耳を使っている約3割に、「後ろからの声かけに気付かず、振り向いたとしても誰に向けて反応すべきなのか判断し難い」との経験があることが分かりました。
そうした不自由に対する対策としては「筆談」(63.0%)が多く、「マスクをずらしてもらう」(26.7%)、「手話・指文字を併用」(25.2%)、「自らマスクを外す」(14.8%)といった対応をしている人もいました。自由回答には、「コロナ禍でマスクを取り外してとは言い難い、相手も不服そうで理解が得られない」「コロナ禍で入院した時、看護師がマスクを外してくれたが感染リスクを考えると申し訳ない」などといった声も寄せられました。
難聴児・者は普段から、耳が聞こえにくいことを外観からは分かってもらえない悩みを抱えています。そのため周囲の人に声をかけられても気付かず無視したと誤解されたり、知能に関わる勘違いをされたりして傷つくことが少なくありません。この調査結果から、コロナ対策によるマスク着用の常態化により、難聴児・者のコミュニケーションのハンディが増幅されていることがうかがえました。