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後迷路性難聴(聴覚失認・皮質聾)[私の治療]

No.5141 (2022年11月05日発行) P.44

加我君孝 (国立病院機構東京医療センター・名誉臨床研究センター長)

登録日: 2022-11-04

最終更新日: 2022-11-01

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  • 後迷路性難聴のうち,聴覚皮質・皮質下の内側膝状体から聴放線,聴皮質に至る大脳への投射路の両側の聴覚中枢伝導路の障害では,聴覚失認や皮質聾が生じる。片側の聴覚中枢伝導路の障害では,軽度の聴覚障害を呈する(図)。

    ▶診断のポイント

    両側の聴皮質,皮質下の脳血管障害,すなわち脳出血や脳梗塞によって生じる。一方,小児ではランドウ・クレフナー症候群,ヘルペス脳炎や副腎白質ジストロフィなどで生じる。

    「音はわかるが言葉はまったく聞き取れない」「言葉も音楽も環境音も聞き取れないが音としてはわかる」「音の方向はわかりにくい」が代表的な症状で,両側障害の症状の程度によって聴覚失認と皮質聾にわかれる。皮質聾ではまったく音を感じることができない。

    両側聴皮質あるいは両側聴放線障害例ではほとんどの聴覚認知機能が失われているため,見掛け上,重度難聴症例と類似している。しかし,聴性脳幹反応(ABR)は左右耳とも正常である。音の強弱の認知はある程度可能で,大きな音を聞かせると不快に感じる程度の残存聴覚がある。視覚と音の統合能力が部分的に保たれるが,リハビリテーションは読話と残存聴力を活かしコミュニケーションを工夫する。残存聴覚がある場合を聴覚失認と言い,残存聴覚をほとんど認めない場合を皮質聾と言う。

    一度の脳血管障害で両側の聴皮質や聴放線が障害されることは少なく,多くは過去に片側の大脳半球に脳血管障害の既往があることが多い。一時的に片麻痺や失語症状が出現するが回復し,その後に時をおいて反対側の大脳半球に脳血管障害が生じたため,両側の聴皮質あるいは聴放線が損傷され,初めて言葉も音楽も聞き取れなくなる。稀に一度の両側の大脳半球の脳血管障害で生じることがある。

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