肥満細胞は,アレルギー疾患でIgEやヒスタミンが関与する即時型過敏反応の形成において中心的な役割を果たしている。また,IgEに対する受容体以外にも多くの受容体を有し,種々の刺激に対していろいろなサイトカインやケモカインを含むメディエーターを産生・放出し,T細胞などの免疫細胞と直接的に相互作用を行う。そのため,水疱性類天疱瘡や関節リウマチなどの自己免疫疾患1)とともに,膠原病での関与も報告されている。マウスの知見が主であるが,全身性エリテマトーデス(SLE)ではループス腎炎や,モデルマウスのMRL/lprマウスのループス様皮膚病変でも多数の肥満細胞の浸潤を認める。また,線維化を担う線維芽細胞と密接に関連し,TGF-βやトリプターゼなどの産生・放出するメディエーターが組織の線維化を促進することから,全身性強皮症における関与も報告されている。
現時点では,自己抗体の産生などの免疫異常の形成において,中心的な役割というよりは,皮膚の線維化や炎症など,標的臓器の損傷などへの関与が示唆される。しかし,遺伝子組み換え技術による肥満細胞特異的欠損マウスを用いた研究では否定的な結果も報告されており2),未知の部分も多いが,今後の研究によっては肥満細胞やそのメディエーターなどが,これらの疾患の治療の標的となりうるかもしれない。
【文献】
1) Benoist C, et al:Nature. 2002;420(6917):875-8.
2) Willenborg S, et al:J Invest Dermatol. 2014; 134(7):2005-15.
【解説】
三木田直哉,*古川福実 和歌山県立医科大学皮膚科 *教授