財務省は11月7日の財政制度等審議会財政制度分科会に提出した資料で、医療費は新型コロナウイルス感染拡大前の水準に回復しており、コロナ関係の補助金収入や診療報酬上の特例などで「医療機関の経営は近年になく好調」との認識を表明。「特例的な補助金や診療報酬は、国民負担によって賄われることを踏まえれば、早急に縮小、廃止すべき」と主張した。分科会は2023年度の予算編成に関する議論を進めており、今月下旬にも建議をまとめる見通しだ。
財務省は概算医療費やコロナ関係補助金の直近の実績から、22年度の概算医療費は45.8兆円(うち、診療報酬上の特例分0.4兆円)、補助金見込額は3.5兆円、両者を合算した総額は49.3兆円になると機械的に推計。その上で、「既にコロナ前の報酬水準(医療費水準)を回復している医療機関に対し、補助金と診療報酬の特例で年間4兆円程度を支援することとなる見込み」と問題提起した。
個別施策では23年度の薬価の中間年改定について、物価高における国民負担軽減の観点から、全品目への対象拡大や実勢価改定に連動しないルールの適用などを含む、薬価改定の「完全実施」を要望。22年度診療報酬改定で導入されたリフィル処方箋による医療費効率化効果の早急な検証も求めた。
医療提供体制では、かかりつけ医機能の制度整備の必要性を強調。ただ、かかりつけ医機能の診療報酬上の評価である「機能強化加算」については、健康保険組合連合会の調査で算定患者の6割で再診がなく、生活習慣病患者での算定割合が低いことが明らかになるなど、「本来は初診患者の中でもより継続的な管理が必要な疾患を有する患者への算定が期待されながらも、算定の実態がまったく異なっており、外来機能の分化につながっていない」と指摘した。
介護関係では、▶利用者負担の原則2割化や2割負担の対象範囲拡大、▶3割負担となる現役世代並み所得の判断基準見直し、▶介護老人福祉施設と同様に、介護老人保健施設や介護医療院等の多床室も室料相当分を基本サービス費から除外(自己負担化)、▶ケアマネジメントへの利用者負担導入、▶要介護1・2の訪問介護・通所介護の「介護予防・日常生活支援総合事業」への移行―などについて検討を促した。