エボラウイルス病(Ebola virus disease:EVD)は,エボラウイルス(フィロウイルス科)による熱性疾患で,これまで1976年に初めてその存在が確認されて以来,中央アフリカでのみ流行してきたウイルスです。エボラウイルスは,ザイール,ブンディブギョ,スーダン,タイフォレスト,レストンおよびボンバリの6型が同定されています。2014〜16年の西アフリカにおけるアウトブレイクを起こしたウイルスはザイール型に属しています。
潜伏期間は主に2〜21日間(通常7〜10日程度)です。症状が発現するまでは,その人は感染力を持ちません。初期症状は,突然の発熱とともに襲われる倦怠感,筋肉痛,頭痛,咽頭痛です1)〜3)。
日本では,感染症法上の1類感染症に指定されており全数届け出疾患です。日本国内では集計が開始されて以降,これまでは輸入例を含めEVDの報告はありません。
エボラウイルスの自然宿主はオオコウモリ科のフルーツコウモリと考えられています。エボラウイルスは感染した人の血液,分泌液,臓器,体液など,また,これらに汚染された物体の表面や日用品(ベッド,衣類など)に(皮膚の傷や粘膜を通して)直接接触することで人から人へと拡がります。医療従事者は,エボラ出血熱の疑い患者や確定患者を扱う際に,しばしば感染しています。これは,感染予防対策が厳格に実践されずに,患者と濃厚に接触することで起きています。埋葬儀式で,参列者が死者の体に直接触れることも,エボラの伝播に寄与しています1)〜3)。
2022年9月20日,ウガンダ共和国保健当局は,9月19日にウガンダ中央部Mubende地区Madudu小郡の村において,スーダンエボラウイルス(Ebola disease caused by Sudan ebolavirus:SUDV)によるエボラ出血熱の発生を確認し,その発生を宣言しました。11月13日現在,合計140人の確定症例,55人の確定症例の死亡症例が報告されています(CFR:39.3%)。
医療従事者では,19人の患者と7人の死亡が報告されています。
SUDVによるEVDの予防と治療に関して,現在承認されたワクチンや治療薬はありません。そのため,WHOは,ウガンダで無作為化臨床試験を行うことができるSUDVに対するワクチン候補を特定するために,ワクチン開発者との国際協議を開始しました4)5)。
・現在,ウガンダで,承認されたワクチンや治療薬がないスーダン型のエボラウイルス病のアウトブレイクが起きています。
・ウガンダの首都カンパラからも感染者が報告されており,今後ウガンダ国外へ感染拡大しないか注意が必要です。
【参考文献】
3) 国立感染症研究所:エボラウイルス,エボラウイルス病とは.