2021年9月に医療的ケア児支援法が施行されてから1年が経った。同法施行による改善点と課題などについて、医療的ケア児の支援に長年携わってきた埼玉医科大学名誉教授・客員教授で佐久大学客員教授の田村正徳氏に聞いた。
人工呼吸器や痰の吸引などが欠かせない医療的ケア児は、全国に約2万人います。今年9月までに35都道府県が、支援法での設置が義務付けられている「医療的ケア児支援センター」を立ち上げました。2022年度末までには計42都道府県で同センターが開設される予定です。
同センターの主な業務は、医療的ケア児とその家族への情報提供や相談・支援、そして、医療、保健、福祉、教育、労働など関係機関への情報提供と研修を行うことです。各都道府県が医療的ケア児と家族の支援を自らの責務と認識し、相談・支援体制を整え始めたことは大きな前進だと思います。
文部科学省は、支援法の施行の前日、都道府県の教育委員会へ通知を出しました。その中では、「医療的ケア看護職員の配置に当たっては、学校の設置者が看護師等を自ら雇用するだけではなく、地域の実情や医療的ケア児の状況等を踏まえ、医療機関や訪問看護ステーション等に委託することも可能」などと明記されています。これを受けて、学校や保育所における看護師配置は着実に増加しています。
特に、看護師を市立病院と兼任で雇用し、必要に応じて学校に配置している大阪府豊中市の事例は、全国の自治体で応用可能な取り組みではないかと思います。
医療的ケア児を受け入れる通常学級や保育所、放課後デイサービス、療養支援に取り組む訪問看護ステーションや日中の一時支援施設も少しずつ増えています。