中央社会保険医療協議会は12月7日と9日に薬価専門部会を開き、2023年度の中間年の薬価改定について議論した。各側の意見は依然、多くの点で隔たりがあるものの、最近の物価高と円安に起因する原材料費の高騰などへの対応では、新型コロナ特例で薬価の下げ率を一律に緩和した21年度改定時のような措置ではなく、影響が大きいカテゴリー(品目)に対象を限定するべきだとの見解でおおむね一致している。
21年度の中間年改定では、薬価と市場実勢価格の乖離率が「平均乖離率の0.625倍」を超える品目を改定対象とし、薬価の引き下げを行った。
厚生労働省が9日の部会に提出した直近の薬価調査結果(平均乖離率7.0%)に基づく試算によると、▶平均乖離率の2倍超を改定対象範囲とした場合/対象品目数4100品目(全品目に占める構成比21%)、影響額1400億円減、▶平均乖離率1倍超/1万400品目(54%)、3800億円減、▶平均乖離率0.75倍超/1万2300品目(64%)、4500億円減、▶平均乖離率0.625倍超/1万3400品目(69%)、4900億円減、▶平均乖離率0.5倍超/1万4500品目(75%)、5000億円減―になるという。
これを受けて診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、改定対象範囲を前回と同様とした場合も相当な経済的影響が出ると危惧。現場への影響を考慮した慎重な議論を促した。有澤賢二委員(日本薬剤師会理事)も「少なくとも前回を超える品目を対象とすべきではない」としたが、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「前回から対象範囲を狭める理由は見当たらない」と、対象範囲の拡大を求めた。
一方、原材料費の高騰などへの特例的対応について診療側の長島委員は、21年度改定時のような一律の取扱いをする必要性は認められず、影響の大きなカテゴリーに対象を限定するべきだとの認識を表明。支払側もこの方向性を支持した。
これに先立つ7日の部会では関係業界のヒアリングを実施。この中で業界側は、▶物価高騰や円安が製造コストや研究開発費に多大な影響を与えており、薬価を引き下げる状況にはない、▶改定を実施する場合は薬価引き下げ率の緩和などの措置が必要、▶採算性が著しく悪化している品目は安定供給確保のために薬価の緊急引き上げを実施すべき―などと改めて訴えた。