自然界の土壌や腐木などに生息するSporothrix属真菌による深在性皮膚感染症で,慢性肉芽腫病変を呈する。露出部に好発し,皮下結節,潰瘍を生じる。日本で分離される菌株の多くはS. globosa(以前はS. schenckiiと分類)である。診断には培養,病理組織所見が重要である。近年,減少傾向にある。
好発部位は顔面や上肢などの露出部で,小児では小外傷を受けやすい顔面に多い。
潜伏期間は2週~1カ月で,菌侵入部に紅色の浸潤を伴う丘疹,膿疱が生じる。
皮内から皮下の結節を生じる。進行すると膿疱や潰瘍を形成し,滲出液や膿汁がみられる。
通常,痛みなどの自覚症状はない。
臨床病型には下記の4つがある。
①リンパ管型:リンパ管の走行に沿って飛び石状に病変を形成する。
②固定型(限局型):菌の侵入部位にのみ病変がみられる。自家接種により衛星病変を形成する。顔面などでリンパ管型と衛星病巣を伴う固定型との鑑別がつかないものを中間型とする報告もある。
③播種型:非常に稀。主に免疫不全の宿主に生じ,血行性に多数の皮膚病変を形成する。
④皮膚以外:非常に稀。内臓・骨に病変を形成する。
滲出液/膿汁のKOH直接鏡検・特殊染色:KOH直接鏡検では,結節上の鱗屑,痂皮からの検出が困難なこともあり,できるだけ滲出液や膿汁より検体を採取する。PAS染色,Grocott染色を行い,胞子状菌要素を確認する。
病理組織学的検査:HE染色では非特異的慢性肉芽腫性病変を呈する。菌要素は間質内に遊離胞子,巨細胞内胞子が認められる。本症に特異的な星芒体(asteroid body)は診断に有用である。
培養・同定:分泌物,組織片をサブローブドウ糖寒天培地に植え培養する。25℃では菌糸型で発育し,約1週間で灰白色から黒褐色の湿性絨毛状のコロニーを形成する。一方37℃では,発育はきわめて遅い。スライド培養では花弁状の分生子や褐色厚壁球形の分生子を認める。
PCR法等の分子生物学的手法は有用であるが,現状では検査可能な施設は限定される。
リンパ管型では,リンパ管に沿って病変を形成する非定型抗酸菌症やリンパ管型皮膚ノカルジア症が挙げられるが,臨床的に鑑別が困難なことがある。
固定型では,クロモミコーシス,皮膚結核などの難治性肉芽腫性疾患との鑑別を要する。
小児の眼囲に生じた場合には霰粒腫を鑑別する。
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