片頭痛は中枢神経系と三叉神経系の機能異常に起因する慢性神経疾患で,悪心・嘔吐や光過敏・音過敏を伴う中等度~重度の頭痛発作が繰り返されるため,生活支障度が高い。一部の患者では,閃輝暗点などの一過性神経学的徴候(前兆)が認められる。脳卒中やてんかんとの鑑別が問題になることがある。病態にカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が重要な役割を果たす。
国際頭痛分類第3版(ICHD-3)の診断基準に従って診断を行う。典型的には,拍動性で片側性の頭痛であり,体動によって増悪する。頭部CTやMRIなどで器質的疾患を除外することが重要である。
「頭痛の診療ガイドライン2021」に従う。治療は,頭痛発作を可及的速やかに頓挫させることを目的に行う急性期治療と発作予防治療の大きく2つにわかれる。急性期治療薬の主役は5-HT1B/1D/1F作動薬であるトリプタン系薬である。軽~中等度の頭痛やトリプタン系薬無効例ではアセトアミノフェンやNSAIDsが用いられる。トリプタン系薬は血管収縮作用があるため,虚血性心疾患の合併例では禁忌である。最近になって製造承認された5-HT1F作動薬ラスミジタンは血管収縮作用がない。
片頭痛予防薬は,月2回以上,あるいは生活に支障をきたす頭痛が3日以上ある場合に使用を検討する。効果判定には2カ月間を要する。有害事象がなければ3~6カ月間使用する。ロメリジン,プロプラノロール,バルプロ酸,CGRP関連抗体薬(ガルカネズマブ,フレマネズマブ,エレヌマブ)に保険適用が,アミトリプチリンに適用外使用が認められている。
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