手指や足趾の皮膚潰瘍は,全身性強皮症(SSc)に特徴的な病態である。さらに壊疽へ進展し,切断に至る例も稀ではない。肺高血圧症治療薬ボセンタンは,デュアルエンドセリン受容体拮抗薬であり,エンドセリン受容体のAとBの両方を阻害し,血管拡張,平滑筋細胞増殖抑制をもたらす。
SSc合併肺高血圧症に対するボセンタン治療中に皮膚潰瘍が改善することが発見されて,このボセンタンの皮膚潰瘍に対する効果が,RAPIDS-1,RAPIDS-2の2つのRCTにより確認された。いずれも試験期間内(RAPIDS-1は16週,RAPIDS-2は24週)における新たな手指潰瘍の出現を有意に抑制した1)。
SSc合併手指潰瘍に対するボセンタンの適応に関して,欧州リウマチ学会は推奨度A,日本皮膚科学会は推奨度Bと評価している2)3)。いずれもCa拮抗薬,プロスタグランジン製剤などの薬剤で効果不十分の際に,ボセンタンの適応を勧めている。
2015年8月,ボセンタンは「全身性強皮症における手指潰瘍の発症抑制」に追加承認された。適応は手指潰瘍の現存と既往歴がある場合に限定されているが,難治病態への対応が可能となった。
【文献】
1) García de la Peña Lefebvre P, et al:Rheumatol Int. 2015;35(9):1447-59.
2)Kowal-Bielecka O, et al:Ann Rheum Dis. 2009;68(5):620-8.
3)藤本 学, 他:日皮会誌. 2011;121(11):2187-223.
【解説】
1)山崎聡士,2)杉山英二 広島大学病院リウマチ・ 膠原病科 1)講師 2)教授